桂枝(けいし)

基原

クスノキ科LauraceaeのケイCinnamomum cassia Blumeの若枝またはその樹皮

性味

辛・甘、温

帰経

肺・心・脾・肝・腎・膀胱

効能・効果

①発汗解肌
②温通経脈
③通陽化気
④平衝降逆

主な漢方薬

葛根湯(かっこんとう)
桂枝湯(けいしとう)
麻黄湯(まおうとう)
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
桂芍知母湯(けいしゃくちもとう)
小建中湯(しょうけんちゅうとう)
温経湯(うんけいとう)
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
五苓散(ごれいさん)
炙甘草湯(しゃかんぞうとう)
その他多数

特徴

ケイは学名をシナモム・カシアといい、別名カシア(シナニッケイ)とも呼ばれます。中国南部原産の常緑樹であり、中国や南アジア、東アジアで広く栽培されています。

ニッケイ属の樹皮からは香辛料として有名なシナモンが得られます。主にシナモンとして流通しているものはシナニッケイ、セイロンニッケイ、ジャワニッケイから得られたものです。シナモンは世界最古のスパイスともいわれ、紀元前4000年ごろからエジプトでミイラの防腐剤として使われていました。中国へは紀元前2500年頃までにインドや中央アジアからシルクロードを経由して伝わったとされ、中国の古い書物では「牡桂」「桂枝」「桂心」として記述されています。このように、古来より医薬品や香辛料として世界各地で消費されていたと考えられ、日本へは8世紀頃、中国から遣唐使によりもたらされています。このときは「桂心」という名前で、薬物として正倉院に奉納されています。樹木として日本に入ってきたのは江戸時代の頃です。

輸入されるシナモンのほとんどがカレーやソース、菓子など食用品として輸入されています。独特の甘みと香り、そしてかすかな辛味があり、カクテル、紅茶、コーヒー等の飲料やアップルパイ、シナモンロールなどの洋菓子の香り付けに使われます。インド料理の配合香辛料ガラムマサラの主要な成分であり、インドのチャイの香りづけにも欠かせません。

シナモンとよく混同されるものにニッキがあります。ニッキは日本産の肉桂から作られるスパイスです。名前の由来は肉桂(にっけい)が訛ってニッキになったと言われています。シナモンの材料になる木は、沖縄を除いて日本では栽培できません。そのため、江戸時代に日本で栽培可能であるシナニッケイの樹木が伝来したことから、日本産肉桂によるニッキが流通するようになりました。京都の銘菓「八つ橋」やニッキ飴、ニッキ水などの香料としても日常的に利用されていました。シナモンが樹皮を使うのに対し、ニッキは根っこの皮が使われます。日本薬局方に第六改正(昭和26年発行)までは「日本ケイ皮」として収載されていましたが、流通実績がないために次の改正から外され、現代においては医薬品として使用されることはありません。収穫量が少ないため、シナモンより高価であることが多く、シナモンが安価で輸入されるようになった現代では、食品としてもほとんど生産されていません。

ケイの葉と小枝もしくは樹皮を水蒸気蒸留して得た精油をケイヒ油といいます。菓子の香料、医薬、石鹸香料などのほか、特に葉からとったものはバニリン製造の原料に用いられます。

西洋医学ではケイの樹皮は芳香性健胃薬として、消化不良や食欲不振に用いられていました。東洋医学では独特の考えで、病気の初期で病邪が身体の表面にあるときに、これを取り去る目的で使います。そのため、葛根湯(かっこんとう)桂枝湯(けいしとう)など風邪の初期に用いる漢方薬に多数配合されています。

中国では樹齢10年以上の太い枝の樹皮を肉桂(にっけい)、若く細い枝を桂枝とし、両者を区別しています。肉桂のほうが温める働きが強く、痛みを止める作用に優れています。桂枝の方は作用が穏やかであり、体表の病邪を去る作用に優れています。日本の漢方薬では桂枝の代わりに肉桂(桂皮)が使われることがほとんどです。

辛温の薬で温め風寒の邪を体表から発散させる辛温解表薬(しんおんげひょうやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に麻黄(まおう)、荊芥(けいがい)、紫蘇(しそ)、羌活(きょうかつ)、防風(ぼうふう)、細辛(さいしん)、辛夷(しんい)、生姜(しょうきょう)などがあります。

体表の病邪を追い出す作用があり、頭痛・発熱・悪寒・風邪の初期などに用いられます。代表的な漢方薬に、葛根(かっこん)と一緒に配合された葛根湯があります。風邪の初期で、汗をかいている時は白芍(びゃくしゃく)と一緒に配合された桂枝湯を用いることで発汗しすぎないように調和します。汗をかいていないときは麻黄(まおう)と一緒に配合された麻黄湯(まおうとう)を用いることで発汗を促します。

体を温め、通りをよくする効果があり、関節痛・腹痛・月経痛に用いられます。代表的な漢方薬に、附子(ぶし)と一緒に配合された桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)や、当帰(とうき)や赤芍(せきしゃく)と一緒に配合された温経湯(うんけいとう)があります。

気の流れが悪いためにおこる水の停滞を解消することで、背部の冷え・息切れ・めまい・動悸などを改善します。代表的な漢方薬に茯苓(ぶくりょう)と一緒に配合された苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)や五苓散(ごれいさん)があります。

心気陰両虚で脈の結代・動悸がみられるときに、炙甘草(しゃかんぞう)と一緒に用いられます。代表的な漢方薬に炙甘草湯(しゃかんぞうとう)があります。

温めることで潤いを損ないやすいので、潤い不足の方や、内熱で口舌乾燥・出血などがある場合は禁忌です。

妊婦さんや月経過多の方には慎重に使用する必要があります。

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