蒼耳子(そうじし)
基原
キク科CompositaeのオナモミXanthium strumarium L.の成熟果実
性味
甘・苦、温。小毒
帰経
肺・脾
効能・効果
①散風通竅
②除湿止痛
③祛風止痒
主な漢方薬
蒼耳散(そうじさん)
特徴
オナモミはアジア大陸原産の一年草で、日本には稲作文化が日本に入った頃に侵入した史前帰化植物と考えられています。かなり古くから日本全国に存在していた植物ですが、近年は同じく帰化植物でより大型の果実をつけるオオオナモミやイガオナモミなどの影響により絶滅危惧II類に指定されており、地域によっては絶滅してしまったとも言われています。
果実にはトゲがついており、近くを歩くとズボンの裾や靴下などの衣服にくっつくひっつき虫の一種です。このトゲには動物の毛に絡みついて種子を運んでもらったり、種子を外敵から守る働きがあります。
和名の由来には諸説あり、引っかかるという意味の「ナズム」が「ナゴム」から「ナモミ」に転化したという説や、茎や葉を揉んで塗ると虫刺されに効くため「ナモミ(菜揉み)」の名がついたという説があります。また、似た名前の植物にメナモミがあり、オナモミはメナモミに対して大型であることから「雌ナモミ(メナモミ)」に対して「雄ナモミ(オナモミ)」と呼ばれるようになったとされています。しかし、実際に比べるとオナモミはメナモミはあまり煮ていません。
中国名である蒼耳子の由来は、果実の形が女性の耳飾りに似ていることからきていると言われています。
オナモミの全草は蒼耳草(そうじそう)という生薬になります。効能は蒼耳子とほぼ同じですが、解毒の力が強いので、皮膚化膿症・虫刺され・蜂刺などに外用したり、細菌性下痢などに内服します。オナモミは全株に毒があり、果実である蒼耳子の毒性がもっとも強く、鮮葉は乾燥葉より、若い葉は古い葉より毒性が強くなっています。過量に服用すると眩暈、頭痛、嘔吐、下痢、蕁麻疹、さらには意識障害や痙攣、肝機能障害などの症状が出現し、中毒により死亡してしまう場合があります。
「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の中品に分類され、「葈耳実」の名前で収載されています。
風湿邪を除く祛風湿薬(きょふうしつやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に独活(どっかつ)、蒼朮(そうじゅつ)、威霊仙(いれいせん)、秦艽(じんぎょう)などがあります。
風寒の頭痛や副鼻腔炎の鼻閉・鼻汁に用いられます。代表的な漢方薬に、辛夷(しんい)や白芷(びゃくし)と一緒に配合された蒼耳散(そうじさん)があります。
風湿痺の関節痛・ひきつりに、防風(ぼうふう)、羌活(きょうかつ)、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)などと一緒に用いられます。
風湿による皮疹の瘙痒に、蒺藜子(しつりし)、蝉退(せんたい)、地膚子(じふし)などと一緒に用いられます。
燥烈ではないので虚証にも応用できますが、血虚の頭痛・痺痛には用いてはいけません。
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