炙甘草湯(しゃかんぞうとう)
組成
炙甘草(しゃかんぞう)・人参(にんじん)・生地黄(しょうじおう)・桂枝(けいし)・阿膠(あきょう)・麦門冬(ばくもんどう)・麻子仁(ましにん)・生姜(しょうきょう)・大棗(たいそう)
効果
体力がおとろえて、疲れやすいものの動悸、息切れ
効能
益気滋陰・通陽復脈
主治
心陰陽両虚:
動悸・息切れ・焦燥感・不眠・不安感・便が硬い・便秘など
肺気陰両虚:
乾咳・無痰または少痰・痰に血がまじる・るい痩・息切れ・自汗または盗汗・咽の乾燥・便秘・ときに発熱など
方意
気血ともに虚し、心悸亢進や不整脈あるいは呼吸促迫を来たした方に用います。
心の動悸を治す主方で、別名復脈湯(ふくみゃくとう)とも言います。
診断のポイントは、不整脈・頻脈・心悸亢進・心下悸・皮膚枯燥・便秘などです。
甘温の炙甘草が主薬で、益気養心・生津し、益気健脾養心の人参・大棗が補助します。甘潤の生地黄・麦門冬・阿膠は陰血を滋養し、麻子仁は潤腸通便に働きます。さらに、辛温の桂枝・生姜により、温陽通脈して血脈の流通を高めます。全体で心気を補益し心陰血を滋養し、心陽を振奮させて、血脈を復することができます。
生地黄・麦門冬等の陰薬が、人参・桂枝等の陽薬より多量に用いられているのは、陰薬が陽薬の助けを借りてよく働くようにと考えられています。陽薬の量が多いと陽の作用が激しすぎて、滋陰の働きが阻害されてしまいます。
類方鑑別
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):
比較的体力の低下した方で、立ちくらみ・めまい・身体動揺感があり、軽度の心悸亢進を伴う場合に用います。
木防已湯(もくぼういとう):
体力のやや低下した方で、呼吸促迫して、心窩部が膨満して硬く、特に尿量減少、浮腫などを伴う場合に用います。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅこつぼれいとう):
比較的体力のある方で、動悸・息切れを訴えますが、季肋部の抵抗・圧痛(胸脇苦満)を認め、不安・不眠などの精神神経症状を伴う場合に用います。
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう):
虚労で動悸・息切れがありますが、脈結代は少ないです。冷えと少腹弦急があります。
参考文献
編著者: 神戸中医学研究会 / [新装版]中医臨床のための方剤学 / 東洋学術出版社 (2012)
編著者: 髙山宏世 / 腹証図解 漢方常用処方解説 / 日本漢方振興会 (1988)
著者: 杉山卓也 / 現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 / 日経印刷 株式会社 (2018)
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