辛夷(しんい)
基原
モクレン科MagnoliaceaeのモクレンMagnolia liliflora Desr.、ハクモクレンM.denudata Desr.などの花蕾
性味
辛、温
帰経
肺・胃
効能・効果
①散風解表
②宣肺通鼻
主な漢方薬
辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)
葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
蒼耳散(そうじさん)
辛夷散(しんいさん)
特徴
モクレンはモクレン科の落葉低木で、中国南部原産の植物です。春に葉が展開するのと同時期に紫紅色の花が咲きます。花が紫色であることからシモクレン(紫木蓮)とも呼ばれ、観賞用として各地で栽培されています。
辛夷として収穫するときは、蕾がまだ開かない早春に摘み取り、枝柄を切り取って乾燥します。辛夷の別名として「辛稚 (しんち) 」「侯桃 (こうとう) 」「房木 (ほうぼく) 」「木筆 (もくしつ)」「迎春 (げいしゅん) 」などがあります。
日本ではタムシバやコブシの蕾も辛夷として使用されており、コブシには「辛夷」の字が当てられています。中国で「辛夷」といえばモクレンのことを示し、中国産の辛夷とは基原が異なるため、「和辛夷」として区別することもあります。日本産は中国産に比べ柔毛が少なく、潤いにかけ、品質は劣るとされます。コブシとタムシバはよく似ていて、一般にコブシというとタムシバをも含んでいるようですが実は別種です。コブシを基原とする辛夷は近年ほとんど市場には出回っていません。
「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の上品に分類され、灰褐色絹様の光沢があり、独特の香りがあって芳香性の強いもの、中身が充実して大きいものが良品とされています。
辛温の薬で温め風寒の邪を体表から発散させる辛温解表薬(しんおんげひょうやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に麻黄(まおう)、桂枝(けいし)、蘇葉(そよう)、荊芥(けいがい)、防風(ぼうふう)、細辛(さいしん)、羌活(きょうかつ)、生姜(しょうきょう)などがあります。
風寒感冒の頭痛・鼻閉・鼻汁などに、白芷(びゃくし)や防風などと一緒に用いられます。代表的な漢方薬に、葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)があります。風熱にも、金銀花(きんぎんか)や黄芩(おうごん)などと一緒に使用されます。
鼻淵(副鼻腔炎)の鼻閉・鼻汁に、蒼耳子(そうじし)や白芷と一緒に用いられます。代表的な漢方薬に、蒼耳散(そうじさん)や辛夷散(しんいさん)があります。
解表にも働きますが、効力はかなり弱いので、一般的な外感表証にはあまり使用されません。
粉末を鼻中に吹き込んでくしゃみをさせ、鼻閉を改善することもできます。
多量に用いると頭のふらつき、目の充血をきたすことがあるので注意が必要です。
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