女神散(にょしんさん)

組成

香附子(こうぶし)黄連(おうれん)黄芩(おうごん)・当帰(とうき)・川芎(せんきゅう)・人参(にんじん)・白朮(びゃくじゅつ)・桂枝(けいし)甘草(かんぞう)・檳榔子(びんろうじ)・丁子(ちょうじ)・木香(もっこう)

効果

のぼせとめまいのあるものの次の諸症:
産前産後の神経症、月経不順、血の道症

効能

疏肝泄熱・養肝温下

主治

肝虚気滞・上熱下寒:
のぼせ・ほてり・めまい・汗が出る・いらいら・鼻出血・下半身の冷え・月経不順など

方意

処方名が特徴的な女神散は、その名の通り女性の更年期障害や産前産後の不調、月経関連の症状などによく用いられます。

もともとは安栄湯(あんえいとう)という処方名で、戦場で戦う兵士の神経症に用いられていました。浅田宗伯(あさだそうはく)の「勿誤薬室方函口訣(ふつごやくしつほうかんくけつ) 」では、「軍中七氣」と言って、戦場の緊張状態により引き起こされる「喜・怒・憂・思・悲・驚・怖」の7つの心の乱れを治療すると記載されています。宗伯の一派が女性の血の道病に用いて著効したことから、女神散の名前になったと言われています。このように、現在の適応症は婦人科系疾患に限定されていますが、本来は男性にも使える処方です。

理気活血剤の範疇に入りますが、気滞と心火旺を伴い、気の上衝と血熱がある病態を治します。

診断のポイントは、のぼせ・めまい・病状が限定して頑固・頭痛・肩こり・心下痞・下腹部の抵抗・圧痛などです。

疏肝の香附子・木香・檳榔子・川芎および温通の桂枝により肝気を疏達して枢機を通暢します。養血の当帰と益気の人参・白朮は補肝に働き、柔肝を通じて疏泄を調整します。黄芩・黄連は上部の熱を清し、泄熱瀉下の大黄は降気の檳榔子とともに上熱を下方に導いて外出させます。温腎の丁子と暖肝の当帰・川芎は下寒を温めます。全体で柔肝調気・清上温下の効能が得られます。現在の処方薬では大黄は除かれている場合があります。

女神散とよく比較される処方に加味逍遙散(かみしょうようさん)があります。両者とも更年期障害などの婦人科系疾患によく用いられ、気滞や熱証に効果的という点が似ています。相違点としては、加味逍遙散の方が女神散より虚証向き、加味逍遙散は愁訴が多様なのに対し女神散は概ね一定、気を降ろす作用や清熱作用は女神散の方強力などが挙げられます。

下寒がより顕著なときは細辛(さいしん)呉茱萸(ごしゅゆ)などを、肝虚が明らかなときは熟地黄(じゅくじおう)・白芍(びゃくしゃく)などを加える必要があります。また、上熱に対しては斂肝の烏梅(うばい)などを配合するほうがよいです。

類方鑑別

加味逍遙散(かみしょうようさん)
動悸・不眠・精神不安など、種々の精神神経症状は似ていますが、体質的に虚弱で、季肋部および下腹部に軽度の抵抗・圧痛を認める場合に用います。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
体力中等度の方で、肩こり・頭痛・のぼせなどの精神神経症状は比較的軽く、下腹部に抵抗・圧痛がある場合に用います。

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
体力が充実した方で、のぼせ・頭痛・めまい・不眠・不安などの精神神経症状が一層激しく、便秘傾向があり、下腹部の抵抗・圧痛が顕著に認められる場合に用います。

温清飲(うんせいいん)
体力中等度の方で、のぼせ・手足のほてり・神経過敏などはありますが、精神神経症状は女神散ほど多彩ではなく、やや軽症の場合に用います。

参考文献

編著者: 神戸中医学研究会 / [新装版]中医臨床のための方剤学 / 東洋学術出版社 (2012)
編著者: 髙山宏世 / 腹証図解 漢方常用処方解説 / 日本漢方振興会 (1988)
著者: 杉山卓也 / 現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 / 日経印刷 株式会社 (2018)

※ この漢方薬は桃華堂では取り扱いのない商品です。

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