甘草(かんぞう)

甘草

基原

マメ科LeguminosaeのウラルカンゾウGlycyrrhiza uralensis Fisch.またはその他同族植物の根およびストロン

性味

甘、平

帰経

十二経

効能・効果

①補中益気
②潤肺・去痰止咳
③緩急止痛
④清熱解毒
⑤調和薬性

主な漢方薬

甘草湯(かんぞうとう)
四君子湯(しくんしとう)
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
その他多数の漢方薬に配合

特徴

甘草はアジアやヨーロッパに広く自生しているマメ科の多年草です。

甘草の栽培は日本では300年以上前から行なわれており、江戸時代には薬用植物として幕府に納められていました。山梨県にある高野家は甘草を納めていた家として知られ、現在も重要文化財として保存されており、「甘草屋敷」の名前で有名です。現代では輸入品の方が安いため国産の甘草はほぼ流通していませんでしたが、近年では再び国内栽培への試みがなされています。

甘草はその名の通り強い甘みを呈するグリチルリチン酸を多く含んでいます。独特の薬臭い香気はありますが、醤油や菓子、煙草などの甘味料として利用されています。甘草を使ったお菓子で有名なのがリコリス菓子です。リコリスキャンディーの食感は飴よりグミに近く、光沢を帯びた真っ黒な色をしています。日本人の味覚には合わない場合が多く「タイヤかゴムのよう」などと言われていますが、海外では馴染み深いお菓子です。

グリチルリチン酸や甘草から得られるその他の成分は消炎作用や美白の効果を持ち、食品や医薬品だけでなく、化粧品、入浴剤、シャンプーなどの原料としても使われています。

古くから漢方で多用されており、「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」では、とても重要という意味で「国老」の称号が与えられています。幅広い漢方薬に用いられる生薬であり、日本国内で発売されている漢方薬の約7割に甘草が入っています。甘草が多用される理由は、甘草のもつ調和薬性の効能にあります。甘草は性質の異なる薬物を調和させたり、薬物の偏性や毒性を軽減したりする効果があります。この効果を期待して、数多くの漢方薬に配合されているのです。

逆に、他の生薬は使わず甘草のみで構成された漢方薬もあります。名前はそのまま甘草湯(かんぞうとう)といって、基本的に複数の生薬を組み合わせて作られる漢方薬のなかでは珍しく、甘草のみを使っている漢方薬です。痛みを緩和する働きがあり、のどの痛み、激しい咳き込み、胃痛などに用いられます。

気を補い胃腸を保護する働きがあり、胃腸が弱って元気がない、無力感、食欲不振、泥状便などに用いられます。代表的な漢方薬に、人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)などと一緒に配合された四君子湯(しくんしとう)や参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)があります。

肺を潤す働きがあり、咳を止めるために用いられます。代表的な漢方薬に乾姜(かんきょう)や五味子(ごみし)と一緒に配合された苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)があります。

止痛効果があり、腹痛や四肢の痙攣痛に用いられます。こむら返りによく使われる芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は、芍薬(しゃくやく)と甘草だけで構成された漢方薬です。

清熱作用・解毒作用があり、喉の痛み・腫れに用いられます。代表的な漢方薬に桔梗(ききょう)と一緒に配合された桔梗湯(ききょうとう)があります。

甘草を加熱加工したものを炙甘草(しゃかんぞう)と言います。甘草に比べて、気を補う働きが強く、元気をつけたい場合は炙甘草を用いたほうがよいです。中医学では蜂蜜に浸した後に加熱処理したものを「炙甘草」と読んでいます。代表的な漢方薬に阿膠(あきょう)や麦門冬(ばくもんどう)と一緒に配合された炙甘草湯(しゃかんぞうとう)があります。炙甘草湯は別名・復脈湯(ふくみゃくとう)と言って、動悸、息切れ、不整脈などに用いられます。

生薬の配合で混ぜると毒性が強く出やすい組み合わせを「十八反(じゅうはっぱん)」と言います。甘草もこの中に含まれており、配合禁忌とされている生薬は甘遂(かんつい)、大戟(たいげき)、芫花(げんか)、海藻(かいそう)などがあります。

甘草を含む漢方薬で有名な副作用に偽アルドステロン症があります。甘草に含まれるグリチルリチン酸が体内で変化し、高血圧、むくみ、低カリウム血症などの症状を引き起こします。血圧を上昇させるホルモンであるアルドステロンが増加していないにも関わらずこのような症状が起こるため、偽アルドステロン症という名前がつけられました。初期症状には手足の力が抜ける、手足のこわばり、高血圧、むくみ、頭痛などがあります。甘草の含有量が多い芍薬甘草湯は特に注意が必要です。芍薬甘草湯を服用していなくても、漢方薬を多数併用することで甘草の過剰摂取になる場合もあります。漢方薬を服用している方は、偽アルドステロン症の初期症状に注意し、もしこのような症状があれば漢方薬を中止して医師に相談しましょう。