熟地黄(じゅくじおう)
基原
ゴマノハグサ科ScrophulariaceaeのジオウRehmannia glutinosa Libosch.やカイケイジオウRehmannia glutinosa Libosch.var hueichingensis Chao et Schihの肥大根を乾燥したのち、酒で蒸して熟製したもの
性味
甘、微温
帰経
心・肝・腎
効能・効果
①補血調経
②滋腎益精
主な漢方薬
六味地黄丸(ろくみじおうがん)
八味地黄丸(はちみじおうがん)
味麦地黄丸(みばくじおうがん)
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
滋腎通耳湯(じじんつうじとう)
知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
大防風湯(だいぼうふうとう)
潤腸湯(じゅんちょうとう)
四物湯(しもつとう)
滋陰降火湯(じいんこうかとう)
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
温清飲(うんせいいん)
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
特徴
ジオウは中国の砂質地や荒れ地に生育する多年草です。日本にはかなり昔に渡来し、「延喜式(927年)」に山城で栽培していたという記録が残っています。奈良県橿原市の地黄町は、鎌倉時代にジオウの産地だった名残です。赤紫色を帯びた長さ3~4cmほどの筒型の綺麗な花をつけますが観賞用として植えられることは少なく、生薬原料として畑か薬用植物園などで栽培されています。
地黄は加工方法の違いによって効能が大きく異なります。鮮地黄(せんじおう)は新鮮なもので清熱涼血・止血に働き、生地黄(しょうじおう)・乾地黄(かんじおう)は乾燥品で涼血滋陰・清熱に働き、熟地黄は何度も酒で蒸し晒す過程を経て熟製したもので滋陰補血の効能を持ちます。加工方法によって効能が変わる理由は、蒸しと乾燥を繰り返すことにより徐々に配糖体と呼ばれる成分の糖が切断され、成分や糖の含量が変化するためです。日本では地黄と言えば乾地黄のことを指しますが、中国では熟地黄のほうが補血、滋陰の力が強いとされ、四物湯(しもつとう)や六味地黄丸(ろくみじおうがん)などには熟地黄が用いられます。鮮地黄は外面が淡黄赤色、熟地黄は漆黒色、乾地黄はその中間の色をしています。日本薬局方では乾地黄と熟地黄を区別せず、単に地黄としています。鮮地黄は日本ではほとんど使用されていません。熟地炭は炭化させたもので止血に用います。
肥大し、味は甘くてわずかに苦く、外面は漆黒色のものが良品とされています。
血虚を改善する養血薬(ようけつやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に何首烏(かしゅう)、阿膠(あきょう)、当帰(とうき)、白芍(びゃくしゃく)、竜眼肉(りゅうがんにく)があります。
血虚による顔色につやがない・頭のふらつき・めまい・目がかすむ・動悸・月経不順・不正性器出血・月経痛などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に、当帰や川芎(せんきゅう)と一緒に配合された四物湯があります。
腎陰不足の腰や膝がだるく無力・遺精・潮熱・盗汗などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に、山薬(さんやく)や山茱萸(さんしゅゆ)と一緒に配合された六味地黄丸があります。
粘膩で助湿碍胃し消化が悪くなるので、脾虚有湿・痰多気滞・食少便溏には用いません。
滋膩を防止するためには、砂仁(しゃにん)とかき混ぜた砂仁拌熟地を使用するのがよいです。
※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。
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