黄芩(おうごん)
基原
シソ科 Labiataeのコガネバナ Scutellaria baicalensis Georgiの周皮を除いた根
性味
苦、寒
帰経
肺・大腸・小腸・脾・胆
効能・効果
①清熱燥湿
②清熱瀉火・解毒・涼血
③清熱安胎
主な漢方薬
温清飲(うんせいいん)
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
葛根黄連黄芩湯(かっこんおうれんおうごんとう)
小柴胡湯(しょうさいことう)
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)
特徴
黄芩はシソ科のコガネバナの根を乾燥させて作ります。コガネバナは漢字で書くと「黄金花」なので黄色の花を想像しますが、実際の花の色は青~紫色です。名前の由来は根っこが黄色であることからきています。黄芩は根っこを使うので、生薬の色も黄色です。
コガネバナの根は2年目までは中身が充実していますが、年数が経つにつれて中央部が腐朽し、黒いゴミのようなものが詰まってきてその後空洞化します。この黒いものはアンコと呼ばれるもので、アンコのあるものよりも中身の充実したもののほうが良品とされています。
熱を冷まして湿邪(しつじゃ)を除く清熱燥湿薬(せいねつそうしつやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に黄連(おうれん)、黄柏(おうばく)、苦参(くじん)などがあります。
黄芩の一番の効能は清熱作用です。特に湿邪(しつじゃ)を伴う熱のうっ滞によく、胸苦しい・悪心・嘔吐・下痢・黄疸などの症状に使います。特にみぞおちのつかえの改善を目標に使用されます。
黄芩・黄連・黄柏の性質はとてもよく似ています。どれも苦味があって熱を冷まし、余分な湿をとる働きがあります。「黄芩は上焦(じょうしょう)を治し、黄連は中焦(ちゅうしょう)を治し、黄柏は下焦(げしょう)を治す」と言われ、黄芩は上焦(上半身)の清熱に優れた効果を発揮します。特に肺熱を冷ます働きが強く、同時に腸の熱を冷ます効果もあります。
黄芩は他の生薬との組み合わせにより様々な効能を示します。黄芩と柴胡(さいこ)の組み合わせは往来寒熱(おうらいかんねつ:悪寒と発熱が交互に現れる状態)を治し、黄芩と芍薬(しゃくやく)の組み合わせは下痢を止め、黄芩と白朮(びゃくじゅつ)の組み合わせは安胎に働くと言われています。
同じ清熱薬である黄連と一緒に配合されている漢方薬を「瀉心湯類(しゃしんとうるい)」と呼びます。瀉心とは、みぞおちのつかえを取り去るという意味で、このような症状がある方に用いられます。代表的な瀉心湯類として、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)などがあります。
体に熱があまりなく、胃腸が弱い方への適応は不向きです。
かつて慢性肝炎には良い薬がなく、漢方薬の小柴胡湯(しょうさいことう)が盛んに使われ、日本で消費される漢方薬の半分が小柴胡湯と言われるほどでした。その結果、一部の方にアレルギー性の間質性肺炎の副作用が発現して大きな問題になりました。現時点では明確に原因は解明されておらず、黄芩と柴胡の関与が示唆されています。副作用が認められた漢方薬の多くは黄芩の量が多かったため、黄芩の単独もしくは黄芩と柴胡(さいこ)の組み合わせ、または黄芩と半夏(はんげ)の組み合わせなどが原因として考えられています。小柴胡湯以外に間質性肺炎の副作用が認められたのは、大柴胡湯(だいさいことう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)、清肺湯(せいはいとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などです。この間質性肺炎の副作用により安全と考えられていた漢方薬への意識が変わり、漢方薬にとって大きな逆風となりました。しかし、間質性肺炎の発祥頻度は年間10万人に4人と極めて稀です。問題は証にあわない漢方薬を漫然と投与したことであり、きちんと体質を見極めて処方することが重要です。
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