山梔子（さんしし）

基原

アカネ科RubiaceaeのクチナシGardenia jasminoides Ellisまたはその他同属植物の成熟果実

性味

苦、寒

帰経

心・肺・肝・胃・三焦

効能・効果

①清熱瀉火・除煩
②清熱利湿
③清熱涼血・止血
④清熱解毒

主な漢方薬

黄連解毒湯（おうれんげどくとう）
竜胆瀉肝湯（りゅうたんしゃかんとう）
防風通聖散（ぼうふうつうしょうさん）
清肺湯（せいはいとう）
清上防風湯（せいじょうぼうふうとう）
辛夷清肺湯（しんいせいはいとう）
柴胡清肝湯（さいこせいかんとう）
五淋散（ごりんさん）
荊芥連翹湯（けいがいれんぎょうとう）
加味逍遙散（かみしょうようさん）
加味帰脾湯（かみきひとう）
温清飲（うんせいいん）
茵蔯蒿湯（いんちんこうとう）
梔子柏皮湯（ししはくひとう）

特徴

クチナシは中国、台湾、日本の西南部に分布する常緑低木で、園芸用として栽培されています。6月から7月にかけて純白の花が開花し、ジャスミンのような甘い香りを発するのが特徴です。栽培されているものは改良されたもので花の径が6～7cmありますが、野生品は花がやや小さく径が5～6cmです。分けて呼ぶときは前者をクチナシ、後者をコリンクチナシといいます。コリンクチナシから取れる小型でコロコロした果実を山梔子、クチナシ由来の細長いものは水梔子（すいしし）として区別されています。

クチナシの名前の由来は、果実が熟しても割れず口を開かないので「口無し」となった説があります。

水溶性の黄色色素として食品の色付けとしても用いられ、正月料理の栗きんとんや沢庵の着色に使われます。山梔子から作られる色素は黄色以外にも青色や赤色もあります。

近年山梔子を含有する漢方薬の長期服用による腸間膜静脈硬化症という副作用が報告されています。病変部周辺には青色の色素沈着が認められ、鬱滞、腸管壁の浮腫、線維化、腸管狭窄となり、腹痛（右側）や下痢、悪心やイレウスなどの症状を呈します。2013年に黄連解毒湯（おうれんげどくとう）、加味逍遥散（かみしょうようさん）、辛夷清肺湯（しんいせいはいとう）の添付文書に、重大な副作用として腸間膜静脈硬化症が記載されるようになりました。2014年には茵蔯蒿湯（いんちんこうとう）に、さらに2018年には全ての山梔子含有医療用漢方製剤に記載されました。添付文書には重要な基本的注意として「サンシシ含有製剤の長期投与（多くは5年以上）により、大腸の色調異常、浮腫、びらん、潰瘍、狭窄を伴う腸間膜静脈硬化症があらわれるおそれがある。長期投与する場合にあっては、定期的にCT、大腸内視鏡等の検査を行うことが望ましい」と記載され、また重大な副作用として「長期投与により、腸間膜静脈硬化症があらわれることがある。腹痛、下痢、便秘、腹部膨満等が繰り返しあらわれた場合、又は便潜血陽性になった場合には投与を中止し、CT、大腸内視鏡等の検査を実施するとともに、適切な処置を行うこと。なお、腸管切除術に至った症例も報告されている」と記載されています。漢方薬の服用歴がない患者さんの症例もあることから、山梔子が唯一の原因ではないようです。

体にこもった熱を除去する清熱瀉火薬（せいねつしゃかやく）に分類され、同じような効能を持つ生薬に石膏（せっこう）、知母（ちも）、栝楼根（かろこん）、竹葉（ちくよう）などがあります。

三焦実火の高熱・意識障害・うわごとなどに用います。代表的な漢方薬に、黄芩（おうごん）と一緒に配合された黄連解毒湯や竜胆瀉肝湯（りゅうたんしゃかんとう）があります。

山梔子に含まれるジェニポサイドは大腸でジェニピンに変わり、吸収されて胆汁分泌促進作用を示すことから、黄疸の治療に応用されます。代表的な漢方薬に、茵蔯蒿（いんちんこう）と一緒に配合された茵蔯蒿湯があります。

膀胱湿熱による排尿痛・排尿困難・尿の混濁に用いられます。代表的な漢方薬に、生地黄（しょうじおう）や車前子（しゃぜんし）などと一緒に配合された五淋散（ごりんさん）があります。

血熱妄行の吐血・鼻出血・血便・血尿・皮下出血などに用いられます。

熱毒による皮膚化膿性疾患に用いられます。代表的な漢方薬に、黄連（おうれん）や連翹（れんぎょう）と一緒に配合された清上防風湯（せいじょうぼうふうとう）があります。

生用すると清熱瀉火に、炒用すると涼血止血に働きます。姜汁で炒すと止嘔除煩の効能が得られます。

外熱には皮（山梔皮）を、内熱には仁（山梔仁）を使用するのがよいとされていますが、現在では全体を用いています。

苦寒で脾陽を損傷しやすく、緩瀉の効能をもつので、脾虚の軟便や下痢傾向の方には用いません。

※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。