五味子(ごみし)

基原

マツブサ科SchisandraceaeのチョウセンゴミシSchizandra chinensis Baillonの成熟果実

性味

酸、温

帰経

肺・心・腎

効能・効果

①斂肺止咳・定喘
②固表斂汗
③益腎固精
④渋腸止瀉
⑤益気生津・止渇

主な漢方薬

五味子湯(ごみしとう)
生脈散(しょうみゃくさん)
苓甘五味姜辛湯(りょうかんごみきょうしんとう)
苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
清肺湯(せいはいとう)
清暑益気湯(せいしょえっきとう)
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
味麦地黄丸(みばくじおうがん)

特徴

チョウセンゴミシはマツブサ科の落葉つる性木本植物です。日本や中国、朝鮮半島に自生していますが、かつては日本には自生がなかったと考えられています。享保年間に朝鮮半島から種子を輸入し、各地の幕府の御薬園で栽培されました。現在では北海道から本州中部の山地に生育しています。

五味子の名前は、植物全体で5つの味を持っていることに由来しています。皮には甘味が、果肉には酸味が、種子には辛味と苦味が、全体からは鹹味(塩味)があります。中国の「五行説」という思想では、五味は人体の五臓六腑にそれぞれが作用して体調を整えると言われています。五味子は五味を備えていますが、酸味がもっとも強く、収斂作用があります。

チョウセンゴミシを基原とする生薬は「北五味子」と称されることもあります。これに対して、ビナンカズラを基原とするものは「南五味子」と呼ばれます。南五味子は生薬をしてはあまり使用されませんが、果実が非常に美しいために、生け垣として使用される場合があります。ビナンカズラは「美男蔓」と書き、髪を梳くのに用いられていました。万葉集には「さな葛」の名前で九首詠まれており、チョウセンゴミシと異なり、こちらの方は日本人には古くから馴染みのある植物だったようです。

「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の上品に収載されており、鎮咳や補腎の働きを目的に多くの処方に配合されています。

昔の五味子は肉厚で、白い粉末が付いているものが多くありました。白い粉は五味子成分の有機酸が析出したものです。最近の五味子は乾燥期間が短いためか暗赤色~黒褐色のものが増えています。

成分としてはシザンドリンやゴミシンなどのリグナン類が約40種類報告されており、これらには鎮咳や抗疲労作用など五味子の薬能を裏付ける薬理実験の結果が多く報告されています。その他クエン酸などの有機酸が豊富に含まれています。

漏れ出るものを引き締める収渋薬(しゅうじゅうやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に山茱萸(さんしゅゆ)烏梅(うばい)烏賊骨(うぞっこつ)訶子(かし)五倍子(ごばいし)、蓮子肉(れんしにく)などがあります。

肺虚あるいは肺腎両虚の慢性咳嗽・呼吸困難に用いられます。代表的な漢方薬に、熟地黄(じゅくじおう)や麦門冬(ばくもんどう)と一緒に配合された味麦地黄丸(みばくじおうがん)があります。

肺寒の咳嗽にも用いられ、代表的な漢方薬に、乾姜(かんきょう)細辛(さいしん)と一緒に配合された小青竜湯(しょうせいりゅうとう)があります。

陰虚の盗汗・遺精・滑精・頻尿・尿失禁や、脾腎陽虚の五更泄瀉(夜明け前の下痢)や慢性の下痢に用いられます。

気陰両虚の口渇・疲労感。元気がない・動悸などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に、人参(にんじん)や麦門冬と一緒に配合された生脈散(しょうみゃくさん)清暑益気湯(せいしょえっきとう)があります。

肺虚寒飲の外感による喘咳・希薄な痰には、温肺散寒の乾姜・細辛などと一緒に用います。

五味子と五倍子は効能がよく似ています。五味子は温性で酸斂のなかに滋養の性質をもつのに対し、五倍子は寒性で収斂のみに働き、降火しますが滋養の効能はありません。
斂肺止咳には少量(1.5~3g)、滋補益陰にはやや大量(6~9g)を用います。

酸斂の作用があるため、熱邪の喘咳・外感の咳嗽で表裏倶実の場合や、麻疹の初期などには用いてはいけません。

※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。

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