厚朴(こうぼく)
基原
モクレン科MagnoliaceaeのカラホオMagnolia officinalis Rehd. et Wils.およびその変種の樹皮。日本産(和厚朴)はホオノキM. obovata Thunb.の樹皮
性味
苦・辛、温
帰経
脾・胃・肺・大腸
効能・効果
①行気化湿
②下気除満
③燥湿化痰・下気降逆
主な漢方薬
平胃散(へいいさん)
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
藿香正気散(かっこうしょうきさん)
麻子仁丸(ましにんがん)
当帰湯(とうきとう)
通導散(つうどうさん)
神秘湯(しんぴとう)
潤腸湯(じゅんちょうとう)
大承気湯(だいじょうきとう)
柴朴湯(さいぼくとう)
五積散(ごしゃくさん)
特徴
厚朴には日本産のホオノキの樹皮である「和厚朴(わこうぼく)」と中国産のカラホオの樹皮である「唐厚朴(とうこうぼく)」があります。日本にはカラホオが自生していなかったため、ホオノキを厚朴として使用するようになりました。ホオノキの樹皮にも中国の厚朴と同じ成分が同程度に含まれており、日本薬局方では中国の厚朴とともに正式に厚朴の一種として記載されています。
ホオノキは日本の山地に生えている落葉高木ですが、人里近くの林の中にも見られます。ホオノキの葉は、食べ物を包むとカビの発生を防ぐことができるとして、食器代わりに用いられていたという歴史もあります。和名の「ホオ」は「包」を意味し、大きな葉で食べ物などを包むことに用いたことに由来します。岐阜県の飛騨高山地方には、ホオノキの葉の上に味噌やいろいろな具を乗せ、炭火で焙る「朴葉(ほおば)味噌」という郷土料理があります。
ホオノキの種子は「和厚朴実」としてカゼや腹部のガスに用いられます。カラホウの花蕾は「厚朴花(こうぼくか)」という生薬になります。
民間療法として、夏に採取した葉を乾燥させ、黒焼きにして粉末にしたものを酢で練ってリウマチの患部に貼ります。
厚朴は「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の中品に分類されています。
皮が厚く、味が強く、香りのあるものが良品とされています。
気の流れをよくする行気薬(こうきやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に香附子(こうぶし)、木香(もっこう)、烏薬(うやく)、陳皮(ちんぴ)、檳榔子(びんろうじ)、薤白(がいはく)、枳実(きじつ)があります。
胸腹部の膨満感、気分の鬱滞、筋肉の緊張・痙攣を取る目的で使用されます。また、虫歯の増殖を抑制することがわかっています。これら厚朴の薬理作用は、マグノロールやホーノキオールの作用によるものです。
胃腸を整える働きがあり、湿困脾胃・食積気滞の腹満・腹痛・下痢などに用いられます。代表的な漢方薬として、蒼朮(そうじゅつ)や陳皮などと一緒に配合された平胃散(へいいさん)があります。
咳や痰を鎮める働きがあり、咳嗽・呼吸困難に用いられます。代表的な漢方薬として、麻黄(まおう)や杏仁(きょうにん)と一緒に配合された神秘湯(しんぴとう)があります。
生姜(しょうきょう)と同煮した製川朴(姜厚朴)は、温中散寒の効能が強くなります。
臨床的には配合の違いにより様々な効能を発揮します。湿滞には蒼朮を助けて燥湿健脾に、気滞には木香を助けて行気止痛に、食滞には枳実を補佐して消痞除脹に、痰滞には半夏(はんげ)を補佐して燥湿化痰に、寒凝には乾姜(かんきょう)を助けて温中散寒に、熱結には大黄(だいおう)を助けて瀉熱導滞に、肺気壅滞には麻黄・杏仁を補佐して下気平喘にそれぞれ働きます。
温燥に偏り行気の力が強いので、内熱津虚・脾胃気虚には用いない方がよいです。妊婦への使用も避けましょう。
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