藿香正気散(かっこうしょうきかん)

組成

藿香(かっこう)蘇葉(そよう)・白芷(びゃくし)・大腹皮(だいふくひ)・茯苓(ぶくりょう)・半夏(はんげ)・白朮(びゃくじゅつ)・陳皮(ちんぴ)・厚朴(こうぼく)桔梗(ききょう)甘草(かんぞう)

効果

体力中等度以下のものの次の諸症:
感冒、暑さによる食欲不振、急性胃腸炎、下痢、全身倦怠

効能

解表化湿・理気和中

主治

外感風寒・内傷湿滞:
発熱・悪寒・頭が重い・頭痛・身体が重だるい・胸苦しい・腹満・腹痛・悪心・嘔吐・下痢

方意

藿香正気散は梅雨の時期によく用いられる処方です。梅雨の時期は湿度が高くなり、食欲不振・下痢・食あたり・水あたり・腹痛・下痢・嘔吐を伴う感冒(胃腸カゼ)など、消化器症状を訴える方が多くみられます。これは消化吸収の働きをしている五臓の「脾」の働きを、湿邪(過剰な湿気)が阻害することで引き起こされます。また、湿邪は粘着質で重く、停滞する性質があるため、体の重だるさ・頭重感・むくみなどの症状も伴う傾向があります。

藿香正気散はこのような湿邪による胃腸機能の失調を改善する働きがあります。藿香正気散が適応するような症状は、湿気が多い時期に身体が冷えて発症することが多いです。近年では冷たいもののとりすぎや、冷房の当たりすぎなどにより夏でも寒邪の影響を受けやすくなっています。

藿香正気散は平胃散(へいいさん)をベースに、藿香・蘇葉・白芷などで芳香化湿、茯苓・半夏で利水、大腹皮・桔梗で理気が強化されています。 主薬の藿香は爽やかな強い芳香が特徴で、芳香健胃、吐き気を鎮める働きがあります。

藿香・白朮・茯苓・陳皮・甘草・半夏・厚朴・桔梗・大腹皮が胃腸を整え、体内の気の状態を正常化します。また、蘇葉・白芷が体表の巡りをよくし、体表の気の状態を正常化します。桔梗が配合されているのは、厚朴・大腹皮などだけでは気を降ろし過ぎて肺気が不足してしまうため、気の上に昇らせる桔梗を入れることで肺気を保ちつつ、厚朴・大腹皮で気を通じるようにしています。陳皮は厚朴・大腹皮と協同することで胃腸の巡りをよくし、藿香・蘇葉と協同することで体表面の邪を発散します。甘草は他の生薬の力で効率よく湿を取り除くために、湿を胃腸に集める役割を担っています。

藿香正気散は、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)二陳湯(にちんとう)の組み合わせも含んでおり、胸のつかえや吐き気を鎮め、胃部の水分や飲食物の停滞を解消する効果が期待されます。

飲食の不摂生により脾胃を損傷する場合には、神麹(しんきく)や麦芽(ばくが)などの消導薬を加えるとよいとされています。

類方鑑別

香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)
お腹の張り、胃もたれ、胃痛などの気滞の症状が顕著な場合に用います。

香蘇散(こうそさん)
気滞を伴いイライラして落ち着かず、お腹がむかついてスッキリしない場合に用います。

柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
悪寒や頭痛があり、汗をかいている状態に加え、熱感と悪心・胃痛などがある場合に用います。風邪の初期から後期まで使用できる処方です。

参蘇飲(じんそいん)
疲れ、だるさを訴える風邪、咳に用います。風邪が治った後にも咳だけがいつまでも残るという場合にも有効です。

参考文献

編著者: 神戸中医学研究会 / [新装版]中医臨床のための方剤学 / 東洋学術出版社 (2012)
編著者: 髙山宏世 / 腹証図解 漢方常用処方解説 / 日本漢方振興会 (1988)
著者: 杉山卓也 / 現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 / 日経印刷 株式会社 (2018)

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