桔梗(ききょう)
基原
キキョウ科Campanulaceaeのキキョウ Platycodon grandiflorum A. DC.の根
性味
苦・辛、平
帰経
肺
効能・効果
①宣肺祛痰
②排膿消腫
主な漢方薬
桔梗湯(ききょうとう)
排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
響声破笛丸(きょうせいはてきがん)
藿香正気散(かっこうしょうきさん)
竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)
小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)
特徴
桔梗はキキョウ科の多年草で、日本や中国、朝鮮半島、シベリアなど東アジアに分布しています。日本では古来より和歌に詠まれたり、和菓子のデザインになったり、園芸用に栽培されるなど私たちの生活にとても身近な花です。そんな桔梗ですが、日本ではなんと絶滅危惧種に指定されています。園芸店で見かける桔梗は栽培用に品種改良されたもので、元々日本に自生していた野生種は激減しているそうです。環境省レッドリスト2017では「絶滅の危険が増大している種」として「絶滅危惧種Ⅱ類(VU)」に指定されています。昭和の頃は草原や林の縁を覗けば自生しているのが見られ、生薬としての桔梗も日本産の野生種を使用していたのですが、驚くべきスピードで桔梗の生息地域は減少しています。減少した要因は、開発による草地の減少、草地や林の手入れ不足による環境変化です。桔梗は定期的に人によって草刈りなどの手入れが行われるような明るい草原や林に生えます。手入れ不足により背の高い植物が生えた土地では、桔梗は生息できないのです。
秋の七草(萩・尾花・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗)の一つでもあります。春の七草(セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ)が食用植物であるのに対し、秋の七草は薬用植物で構成されています。
桔梗の花は観賞用としてよく栽培されています。花の色には青紫の他に白・淡紅などがあり、八重咲きのものもあります。日当たりのよい場所を好み、初心者でも育てやすい丈夫な植物です。
根をそのまま乾燥したものを「生干桔梗(きぼしききょう)」、根の周皮を除いて乾燥したものを「晒桔梗(さらしききょう)」といいます。いずれも生薬としては内部が白くて充実し、根は太くて分岐がなく、味はえぐみの強いものが良品とされています。
五臓の「肺」のトラブルである咳や喉の痛み、腫れものを改善する効果があり、のど飴や風邪薬にも配合されています。
咳を止める止咳平喘薬(しがいへいぜんやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に杏仁(きょうにん)、款冬花(かんとうか)、白前(びゃくぜん)、旋覆花(せんぷくか)、桑白皮(そうはくひ)、枇杷葉(びわよう)、蘇子(そし)があります。
桔梗の根に含まれるサポニンが鎮咳・祛痰作用を示します。サポニンは適量であれば気管の痰を出やすくしてくれますが、多量に服用すると悪心、嘔吐を催すこともあり注意が必要です。代表的な漢方薬に桔梗と甘草(かんぞう)の二味だけで構成された桔梗湯(ききょうとう)があります。
喉の炎症を抑える働きがあり、訶子(かし)や連翹(れんぎょう)と共に響声破笛丸(きょうせいはてきがん)に配合されています。
化膿性の腫れものを治す働きがあり、胸痛や濃血痰に用いられます。代表的な漢方薬は、枳実(きじつ)と一緒に配合された排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)や、柴胡(さいこ)と一緒に配合された十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)です。
炎症が強い場合には石膏(せっこう)と桔梗の組み合わせがよいとされています。小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)は名前の通り小柴胡湯(しょうさいことう)に桔梗と石膏が加えられており、より熱症状が強い場合に用いられます。
体内の水分代謝には五臓の「肺」「脾」「腎」の3つが関わっていると言われています。桔梗は五臓の「肺」の働きをよくすることで水の巡りを改善し、尿トラブルを改善する効果があります。
ほかの生薬の働きを体の上部に運ぶ引経上浮薬であり、上半身に病がある場合より効果を発揮しやすくしてくれます。
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