十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)

組成

独活(どっかつ)・防風(ぼうふう)・荊芥(けいがい)・柴胡(さいこ)・川芎(せんきゅう)・桔梗(ききょう)・茯苓(ぶくりょう)・甘草(かんぞう)・生姜(しょうきょう)・桜皮(おうひ)または樸樕(ぼくそく)

効果

化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、急性湿疹、水虫

効能

発汗解表・消瘡止痛

主治

瘡瘍の初期

方意

日本生まれの漢方薬で、名前の通り10種の薬味を組み合わせて体表の毒を中和あるいは排泄させる方剤です。炎症・化膿傾向をもつ皮疹の初期に用います。

診断のポイントは、化膿傾向をもつ丘疹・多量の分泌物・胸脇苦満などです。

十味敗毒湯は「万病回春(まんびょうかいしゅん)」の荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)の加減方です。荊防敗毒散の羌活(きょうかつ)・枳穀(きこく)の代わりに桜皮あるいは樸樕・生姜が用いられているだけで、方意はあまり変わりありません。全体の薬効は消炎・排膿・解熱・鎮静・滲出物の抑制などの効果を発揮します。

風邪+湿邪という2つの原因で起きたかゆみ、皮膚の湿疹や蕁麻疹(化膿性で患部の熱感や発赤を持つものが多い)に対して、防風・荊芥・独活・川芎の血管拡張作用で発汗を促し、風湿の害を発散(祛風・祛湿)させて皮膚症状を改善します。

柴胡・桜皮・桔梗・甘草が皮膚の炎症を鎮めて解毒を促進し、茯苓・生姜が患部に溜まった湿邪を取り除く力をさらに促進します。

皮膚疾患に対する漢方薬の中でも、十味敗毒湯のように発汗作用のある生薬を含むものは、使用初期に一時的に皮膚状態や湿疹の具合が悪化する(好転反応)ことが多いのが特徴です。

同じ皮膚疾患でも、主たる原因が風邪+湿邪なら十味敗毒湯、風邪なら清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)、血虚による血液循環の低下なら荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)が適応します。

華岡青洲(はなおかせいしゅう)によって開発された十味敗毒湯には桜皮と羌活が用いられていましたが、後に桜皮を樸樕に、羌活を独活に改められています。一部のメーカーでは現代でも桜皮を用いた十味敗毒湯が販売されています。

類方鑑別

消風散(しょうふうさん)
比較的体力のある方で患部の湿潤と、瘙痒感が顕著で痂皮の形成と苔癬化があり、口渇を伴う場合に用います。

温清飲(うんせいいん)
体力中等度の方で患部は赤味を帯び、熱感があり、瘙痒感がひどい場合に用います。

加味逍遙散合四物湯(かみしょうようさんごうしもつとう):
体質が虚弱で手足が冷えて疲れやすく、めまい・動悸・不眠などの訴えのある方の慢性の皮膚疾患に用います。

葛根湯(かっこんとう)
多くは上半身の急性発疹で、発赤・腫脹・瘙痒感の強い場合に用います。

治頭瘡一方(ちづそういっぽう):
滲出性と痂皮形成がより顕著です。

清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
上半身、特に頭や顔面に限局する化膿性皮疹に用います。

参考文献

編著者: 神戸中医学研究会 / [新装版]中医臨床のための方剤学 / 東洋学術出版社 (2012)
編著者: 髙山宏世 / 腹証図解 漢方常用処方解説 / 日本漢方振興会 (1988)
著者: 杉山卓也 / 現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 / 日経印刷 株式会社 (2018)