小麦(しょうばく)
基原
イネ科GramineaeのコムギTriticum aestivum L.の種子
性味
甘、微寒
帰経
心・肝
効能・効果
①養心安神
主な漢方薬
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
厚朴麻黄湯(こうぼくまおうとう)
特徴
コムギは世界で最も生産量が多い穀物で、コメ、トウモロコシとともに世界三大穀物といわれています。コムギが人類に作物として利用されたのは1万~1万5000年前からであり、多くの地域で主食とされ、食生活に欠かせないものになっています。原産地は西アジアで、日本にイネと前後して中国から伝来したと考えられています。これほど身近な植物なのですが、薬用として利用されていることはあまり知られていません。
小麦は「名医別録(めいいべつろく)」の中品に分類されており、「味甘、微寒、無毒。熱を除き、燥渇、咽乾を止め、小便を利し、肝気を養い、漏血、唾血を止める」と記載されています。
小麦粉は穎を除いた果実を粉にしていますが、生薬の場合は種子のまま利用します。「皮涼肉温」と言って表皮は清熱作用やイライラを抑える作用が強いとされており、薬用の中心は表皮にあります。パンや麺類の原料の小麦粉は胚芽やふすまを除いて精製されたもので、この部分については「温。熱を消すこと、煩を止めることはできない。微毒がある」とあり、皮と実で効能が違うことが記されています。小麦粉の取りすぎには、大根を同時に食べるとその熱毒が解消する、と古くから言われています。
小麦は南方産が温性で北方産が涼性であり、北方産が良品とされています。
小麦の中で、水中に投じたときに浮いてくる未成熟な果実を「浮小麦(ふしょうばく)」とよんでいます。
煩わしい不快な熱感を除き、のどの渇きや口内の乾燥を止め、小便の排出をよくする働きがあります。日本の民間療法として、尿が出にくいときに小麦を煎じて飲む、しゃっくりに小麦の粉末を飲む、床ずれの予防に浮小麦を敷くなどの方法が知られています。
心神不安を治療する養心安神薬(ようしんあんじんやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に酸棗仁(さんそうにん)、柏子仁(はくしにん)、夜交藤(やこうとう)、遠志(おんじ)、合歓皮(ごうかんひ)などがあります。
心神不寧による焦燥・不安・悲しい・恍惚状態・不眠・痙攣などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に、甘草(かんぞう)や大棗(たいそう)と一緒に配合された甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)があります。
※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。
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