山茱萸(さんしゅゆ)
基原
ミズキ科CornaceaeのサンシュユCornus officinalis Siebold et Zuccariniの成熟した果肉
性味
酸・渋、微温
帰経
肝・腎
効能・効果
①補益肝腎
②渋精縮尿
③固経止血
④斂汗固脱
主な漢方薬
六味地黄丸(ろくみじおうがん)
知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
八味地黄丸(はちみじおうがん)
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
味麦地黄丸(みばくじおうがん)
山茱萸丸(さんしゅゆがん)
特徴
サンシュユはミズキ科の落葉小高木で、ミズキやハナミズキと近縁の植物です。中国、朝鮮半島に自生し、日本には江戸中期に薬用として朝鮮半島から導入されました。現在の日本では薬用としての栽培はなく、園芸用として栽培されています。
サンシュユは漢名の山茱萸の音読みが由来です。早春に木一面に黄色の花をつけることから「ハルコガネバナ(春黄金花)」、秋になると枝一面にグミの実に似た赤い実がつく様子から「アキサンゴ(秋珊瑚)」という別名もあります。
「茱萸」と名のつく生薬は「呉茱萸(ごしゅゆ)」と「山茱萸」の2種類があります。名前の由来はそれぞれ「呉の茱萸」、「山の茱萸」で、「茱」は赤い果実を、「萸」はグミを意味しています。呉茱萸はミカン科であり、ミズキ科の山茱萸とは基原も効能も異なっています。おそらく「茱萸」が示している植物はそれぞれ別のものであると考えられます。
古くから滋養強壮や疲労回復の民間薬として利用されており、酒に浸けた薬酒として知られています。
果肉が厚く、黒色を帯びることなく赤色を呈して油潤しており、種子の抜き取りが十分で、酸味・渋みがあるものが良品とされています。古くなったものや、果肉の少ないものは劣るとされています。乾燥し保存してあるものは表面が白くなりますが、これは結晶化した成分です。
山茱萸は「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の中品に収載されています。
漏れ出るものを引き締める収渋薬(しゅうじゅうやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に五味子(ごみし)、烏梅(うばい)、烏賊骨(うぞくこつ)、訶子(かし)、五倍子(ごばいし)、蓮子肉(れんしにく)などがあります。こうした性質の薬物は、一般に酸味と渋味があります。
肝腎不足の腰や膝がだるく無力・めまい・頭のふらつきなどに用いられます。代表的な漢方薬に、熟地黄(じゅくじおう)と一緒に配合された六味地黄丸(ろくみじおうがん)や八味地黄丸(はちみじおうがん)があります。
腎虚による遺精・頻尿・尿失禁などに熟地黄・補骨脂(ほこつし)などと一緒に用いられます。
衝任虚損の不正出血・月経過多などに熟地黄・当帰(とうき)・烏賊骨などと一緒に用いられます。
虚脱や久病で汗が止まらないときに、竜骨(りゅうこつ)・牡蛎(ぼれい)と一緒に用いられます。
山茱萸は滋陰にも補陽にも働く肝腎不足の要薬ですが、補益の力は固渋より劣ります。甘寒滋薬と一緒に用いると補陰血に、甘温辛熱薬に配合すると補陽気に働きます。
微温収渋なので、陰虚陽亢・温熱内蘊・小便不利には用いません。
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