砂仁(しゃにん)・縮砂(しゅくしゃ)
基原
ショウガ科ZingiberaceaeのヨウシュクシャAmomum villosum Lour.の種子団塊。Amomum xanthioides Wall. Ex Bak.の種子は縮砂として区別する
性味
辛、温
帰経
脾・胃・腎
効能・効果
①行気止痛・消食
②開胃止嘔
③温脾止瀉
③理気安胎
主な漢方薬
香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)
香砂二陳湯(こうしゃにちんとう)
香砂枳朮丸(こうしゃきじゅつがん)
参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)
安中散(あんちゅうさん)
特徴
ヨウシュクシャは東南アジア全域と中国南部で栽培されているショウガ科の常緑植物です。ショウガ科は種類が多いことに加え形態が互いに類似していることから分類が困難な植物群で、由来する生薬の原植物の同定が困難な場合があります。砂仁もその一つです。
中国で主に使用されているのは、国の広東・広西などで生産される陽春砂仁です。他にも緑殻砂や海南砂と呼ばれるものもあります。ベトナム・タイなどで生産されるものは縮砂と呼ばれており、陽春砂仁の方が上質とされています。日本薬局方の縮砂に対応するものはAmomum xanthioides Wall.(緑殻砂)に由来する砂仁であり、名称に注意が必要です。また、過去に日本では伊豆縮砂という名称でハナミョウガの種子を用いたこともありましたが、品質が良くないという理由で使用されなくなりました。
ヨウシュクシャの果殻は「砂仁殻(しゃにんこく)」、花は「砂仁花(しゃじんか)」という生薬になります。効能は砂仁と同じで、温性が少なく薬力が弱いので脾胃気滞に用います。
縮砂の名前は、皮が縮まってシワになっているのと、その形や色が砂に似ていることに由来しています。
完熟充実し、芳香が強いものが良品とされています。
気の流れをよくする行気薬(こうきやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に香附子(こうぶし)、木香(もっこう)、烏薬(うやく)、陳皮(ちんぴ)、檳榔子(びんろうじ)、薤白(がいはく)、枳実(きじつ)があります。
脾胃気滞・食積による腹満・痞え・腹痛などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に、木香や枳実などと一緒に配合された香砂枳朮丸(こうしゃきじゅつがん)があります。
湿困脾胃の悪心・嘔吐・痞え・腹満・食欲不振などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に、陳皮や半夏(はんげ)などと一緒に配合された香砂二陳湯(こうしゃにちんとう)があります。
脾胃気虚の食欲不振・悪心・嘔吐などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に、人参(にんじん)や白朮(びゃくじゅつ)と一緒に配合された香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)があります。
妊娠嘔吐に、単味の粉末を呑服したり噛んで服用するか、半夏や竹筎(ちくじょ)、黄芩(おうごん)などと一緒に用いられます。
脾虚寒湿積滞の水様下痢・腹痛などの症状に、乾姜(かんきょう)や肉豆蔲(にくずく)と一緒に用いられます。
胎動不安(切迫流産の腹痛など)に、白朮(びゃくじゅつ)や続断(ぞくだん)と一緒に用いられます。
煎剤には、後下するか粉末を冲服します。
辛散温燥であるため、陰虚火旺の方には用いません。
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