何首烏(かしゅう)
基原
タデ科Polygonaceaeのツルドクダミ Polygonum multiflorum Thunb.の塊根
性味
苦・甘・渋、微温
帰経
肝・腎
効能・効果
①補肝腎・益精血・生発烏髪
②解毒
③潤腸通便
主な漢方薬
当帰飲子(とうきいんし)
七宝美髯丹(しちほうびぜんたん)
何首烏散(かしゅうさん)
特徴
ツルドクダミは中国原産のタデ科のつる性多年草です。葉は互生し、柄があり、ハートの形をしています。葉の形がドクダミに似ており、つるになることが和名の由来ですが、ドクダミとは科の異なる別の植物です。ドクダミと葉は似ていますが、ドクダミのもつ独特の香りはしません。ドクダミも十薬(じゅうやく)という名前の生薬になり、毒消しの薬草として用いられています。
ツルドクダミの塊根は何首烏という生薬になり、つるの部分は夜交藤(やこうとう)という生薬になります。使用部位により薬効が異なり、何首烏は滋養強壮薬として、夜交藤は不眠症に用いられています。
渋くてやや苦みがあり、表面がゴツゴツして肥大したものが良品とされています。
何首烏は「赤首烏」という別名でも呼ばれています。この「赤首烏」とは別に「白首烏」という生薬がありますが、白首烏はキョウチクトウ科のヤハズイケマあるいはコイケマ由来の生薬であり、全く違う植物です。中国では滋養強壮薬として用いられています。
何首烏は古くから不老長寿のための滋養強壮薬として利用されており、中国では朝鮮人参と並ぶほど重宝されています。何首烏の名前の由来となった有名な伝説「何首烏伝」でもその効果が記されています。ある人物がツルドクダミの根を服用したところ、生まれつき弱かった体が元気になり、白かった髪も黒くなりました。その髪は130歳になっても黒いままだったそうです。さらにその子供と孫も親子三代がツルドクダミの根を服用して長生きをしたそうです。その人物は「何首烏」と周りの人々から呼ばれるようになりました。何は姓で、首は頭を、烏はからすような黒を意味しており、それが後々に生薬名になりました。
美髪の秘薬として知られており、市販の育毛剤にも配合されることがあります。漢方では若白髪や抜け毛などの髪の衰えは五臓の「腎」の弱りと捉えます。何首烏には腎を補い、精や血を増やす働きがあります。肝腎精血不足による頭のふらつき、目のかすみ、めまい、耳鳴り、四肢のしびれにもよく、代表的な漢方薬に七宝美髯丹(しちほうびぜんたん)があります。
血虚を改善する養血薬(ようけつやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に熟地黄(じゅくじおう)、阿膠(あきょう)、当帰(とうき)、白芍(びゃくしゃく)があります。
熱加工した何首烏は補う力に優れ、生の何首烏は腸の働きを活発にして、便秘を治す働きに優れています。解毒作用もあり、血虚(血が不足した状態)による皮膚のかゆみに生地黄(しょうじおう)や当帰と一緒に用いられ、表的な漢方薬に当帰飲子(とうきいんし)があります。
成分としてアントラキノンやタンニンなどを含み、薬理作用として血中コレステロール低下作用、血糖降下作用、抗菌作用があります。
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