芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)
組成
当帰(とうき)・川芎(せんきゅう)・白芍(びゃくしゃく)・熟地黄(じゅくじおう)・木香(もっこう)・烏薬(うやく)・香附子(こうぶし)・枳穀(きこく)・陳皮(ちんぴ)・桂枝(けいし)・乾姜(かんきょう)・桃仁(とうにん)・紅花(こうか)・牡丹皮(ばたんぴ)・益母草(やくもそう)・牛膝(ごしつ)・延胡索(えんごさく)・白朮(びゃくじゅつ)・茯苓(ぶくりょう)・大棗(たいそう)・甘草(かんぞう)
効果
体力中等度以下のものの次の諸症:
月経不順、産後の体力低下、血の道症
※ただし産後の場合は体力に関わらず使用できる
効能
養血健脾・行気活血
方意
産後は瘀血(おけつ:血流が悪い状態)やストレスがたまりやすく、また疲れやすくなります。芎帰調血飲第一加減は産後の聖薬と呼ばれており、産後ならばどんな症状にも使ってよいと言われるほどです。特に芎帰調血飲第一加減が適応するのは産後の催乳、悪露、産後血脚気などの症状です。
血流を改善することにより、子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科疾患や、下肢静脈瘤などを治療します。瘀血の症状があれば、男女を問わず使用できます。
同じ一貫堂の打撲に使う通導散(つうどうさん)と表裏の関係にあります。実証で熱証には通導散を用い、気滞血瘀の寒証には芎帰調血飲第一加減が用いられます。
芎帰調血飲第一加減は補血調経の四物湯(しもつとう)をベースに、駆瘀血剤の桃仁・紅花を加えた桃紅四物湯(とうこうしもつとう)が基本となった処方です。芎帰調血飲第一加減には21種類の生薬が含まれており、中でも理気薬の種類の多さが際立っています。これら理気薬の働きにより、血液の流れを促進して身体を温めます。また、理気薬には鎮静の作用もあると考えられています。
桂枝・乾姜が腹(裏)を温め、茯苓・白朮が利水し、陳皮・枳穀・烏薬・香附子・木香は気を巡らし、川芎・益母草・延胡索・牛膝・桃仁・紅花は瘀血を改善し、当帰・白芍は血を補い、牡丹皮・熟地黄は血熱を去り、白朮・甘草・茯苓・大棗が補養します。
安神作用が必要な場合は竜骨(りゅうこつ)や牡蛎(ぼれい)を追加し、腫れがある場合には薏苡仁(よくいにん)を加え、通陽通絡を目的に地竜(じりゅう)を加えます。
類方鑑別
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):
瘀血のファーストチョイス。軽い打撲でもうっ血しやすく、下腹部に痛みを訴える場合に用います。
加味逍遙散(かみしょうようさん):
神経質で、なんとなくイライラしてのぼせる方に用います。女性の場合は生理不順があり、生理前に体調を崩す方に適しています。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):
冷え性の方で、むくみやすく、生理不順のある方に用います。
通導散(つうどうさん):
瘀血の実証で、熱証の方に用います。気滞により瘀血が形成された場合に適しています。
参考文献
編著者: 神戸中医学研究会 / [新装版]中医臨床のための方剤学 / 東洋学術出版社 (2012)
編著者: 髙山宏世 / 腹証図解 漢方常用処方解説 / 日本漢方振興会 (1988)
著者: 杉山卓也 / 現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 / 日経印刷 株式会社 (2018)
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