香砂六君子湯（こうしゃりっくんしとう）

組成

人参（にんじん）・白朮（びゃくじゅつ）・茯苓（ぶくりょう）・半夏（はんげ）・陳皮（ちんぴ）・甘草（かんぞう）・生姜（しょうきょう）・大棗（たいそう）・縮砂（しゅくしゃ）・藿香（かっこう）・香附子（こうぶし）もしくは木香（もっこう）

効果

体力中等度以下で、気分が沈みがちで頭が重く、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえて疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症：
胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

効能

益気健脾・理気和胃・止痛

主治

脾胃気虚の寒湿阻滞で、曖気・腹満・腹痛・下痢などを呈するもの

方意

六君子湯（りっくんしとう）の証で、みぞおちのつかえがあり、気鬱の症状がある方に用います。気鬱の症状としては、気力が弱く、気が沈んで気分が塞がり、意気消沈している精神状態を呈しています。腸内ガスがたまったり、そのために軽い腹痛が起こり、神経症状が強い方に用います。

六君子湯の加味方である香砂六君子湯は、出典により「香」とする生薬が異なっています。「香」とされている生薬は、藿香・香附子・木香の3種類があります。藿香は芳香性で湿気による食欲不振、胃腸の不快感、嘔吐、下痢、夏風邪の胃腸症状などを改善します。香附子は気滞による胸脇や胃部の痞え感、張痛・げっぷ、食欲不振、婦人の月経関連の痛みを改善します。木香は主に脾胃の気滞による張満、胃痛、腹痛、悪心、嘔吐などに用いられます。「砂」にあたる生薬は砂仁で、胃腸機能の低下による胃部膨満感、腹痛、胃腸の冷え、食欲不振、嘔吐、下痢などを改善します。

香砂六君子湯は六君子湯と比べて燥性だけでなく、温性も強化されています。

六君子湯で食欲亢進しなかった場合に、芳香性健胃薬が加わった香り高い香砂六君子湯を用いるとよいです。

類方鑑別

六君子湯（りっくんしとう）：
食べると眠くなり、疲れやすく、朝寝起きの悪い方に用います。

四君子湯（しくんしとう）：
気虚の代表処方で、胃腸虚弱に用います。

参苓白朮散（じんりょうびゃくじゅつさん）：
六君子湯証で、常に下痢を伴い、食欲がないために用います。

帰脾湯（きひとう）：
六君子湯証に精神安定を加えたような処方。

参考文献

編著者: 神戸中医学研究会 / ［新装版］中医臨床のための方剤学 / 東洋学術出版社 (2012)
編著者: 髙山宏世 / 腹証図解　漢方常用処方解説 / 日本漢方振興会 (1988)
著者: 杉山卓也 / 現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 / 日経印刷 株式会社 (2018)