抑肝散(よくかんさん)

組成

釣藤鈎(ちょうとうこう)・柴胡(さいこ)甘草(かんぞう)・当帰(とうき)・茯苓(ぶくりょう)・白朮(びゃくじゅつ)・川芎(せんきゅう)

効果

虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:
神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症

効能

平肝熄風・疏肝健脾

主治

肝鬱化風のけいれん・歯ぎしり・いらいら・不眠など

方意

抑肝散は肝気が昂ぶって興奮するものを抑える方剤です。肝火亢動して発熱、筋肉の緊張を来たしている状態を鎮静させるのでこの名前がついています。

診断のポイントは、イライラ・興奮しやすい・腹直筋の緊張・筋痙攣・心下痞鞕などです。

もともとは小児の疳症(ひきつけ・夜泣き・神経過敏症など)を対象とする漢方薬です。方後に「子母同服」とあり、子供と一緒に母親も服用するように指示があります。これは、小児の疳症は一緒にいる時間の多い母親の影響が大きいと考えられていたため、両者一緒に服用することを勧めていました。

ストレスの発散がうまくいかずイライラするタイプは大人にも多く、小児以外にも幅広く使えます。最近、よく「認知症改善に抑肝散」などと言われますがこれは正しくありません。あくまでも認知症による情動行動の暴走を鎮める効果であり、認知症自体を治すわけではありません。

釣藤鈎・柴胡の優れた鎮静・鎮痙効果により、精神安定と痙攣(てんかん・ひきつけ)の改善が期待できます。白朮・茯苓・甘草は消化器系の働きを改善し、エネルギー量を増加させます。当帰・川芎は補血作用と血液循環を改善させます。

全体としては、気血両虚の状態にある方が肝陽化風の症状を呈するのを治します。

鎮静だけでなく手厚い滋養効果を持つため、精神疲労に伴い肉体の虚弱あるいは消耗の大きい時でも使用が可能です。

受験生や中間管理職の方など、精神的な緊張状態が続き、イライラが止まらない場合などにもおすすめです。

類方鑑別

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
抑肝散の症状が慢性化して腹直筋が軟弱となり、腹部大動脈の拍動が強く感じられる場合に用います。湿痰の証が加わっています。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
比較的体力のある方が動悸・不眠・精神不安・神経過敏などの精神神経症状を訴え、季肋下部の抵抗・圧痛(胸脇苦満)、臍傍の動悸・便秘の傾向がある場合に用います。

加味逍遙散(かみしょうようさん)
体質虚弱な方、特に女性が疲れやすく、手足が冷えのぼせとともに動悸・不眠・精神不安など、種々の精神神経症状を訴える場合に用います。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
神経質で動悸・不眠・精神不安・咽喉異物感(咽中炙臠)を訴える場合に用います。

甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
症状が急迫性で腹直筋が緊張し、神経がはなはだしく高ぶり、時に痙攣を伴う場合に用います。

釣藤散(ちょうとうさん)
癇癪持ちで逆上や頭痛めまいがあります。

参考文献

編著者: 神戸中医学研究会 / [新装版]中医臨床のための方剤学 / 東洋学術出版社 (2012)
編著者: 髙山宏世 / 腹証図解 漢方常用処方解説 / 日本漢方振興会 (1988)
著者: 杉山卓也 / 現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 / 日経印刷 株式会社 (2018)

※ この漢方薬は桃華堂では取り扱いのない商品です。

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