苦参(くじん)
基原
マメ科Leguminosaeのクララ Sophora flavescens Aitonの根
性味
苦、寒
帰経
心・脾・大腸・小腸・肝・腎
効能・効果
①清熱燥湿
②殺虫止痒
主な漢方薬
苦参湯(くじんとう)
三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)
消風散(しょうふうさん)
特徴
クララはマメ科の多年草で、日当たりの良い草原、山野の道ばたや土手などに自生しています。近年は農業形態の変化により草原が減少しており、自生地もかなり減っています。全草有毒であり、根の部分が特に毒性が強いです。薬効成分及び有毒成分であるアルカロイドのマトリンは、薬理作用が激しく、量を間違えると大脳の麻痺を引き起こす可能性があるため、使用には注意が必要です。
和名の由来は、根を噛むとクララの苦味(毒)でめまいがするので「眩草(くららぐさ)」と呼ばれたことからきていると言われています。樹木のエンジュ(槐花・槐角)に似ていることから、クサエンジュとも呼ばれています。生薬名の苦参の由来は、極めて苦味が強いことと、根が人参のような形をしていることからきていると言われています。
昆虫への有毒性を利用し、農作物の殺虫や、家畜の皮膚寄生虫の駆除、便所のうじ殺しなどに用いられていました。昆虫に対して毒性があるにも関わらず、オオルリシジミという蝶はむしろクララだけを食草としています。草原に自生するクララは有毒であるため、放牧された牛はクララを食草せず、放牧地にそのまま残っていました。この残されたクララの花やつぼみを食べて、オオルリシジミは生きていました。クララの自生地域の減少に伴い、オオルリシジミも激減してしまい、現在絶滅危惧種に指定されています。瑠璃色の羽が特徴の美しい蝶であり、4月下旬~5月上旬頃に阿蘇の草原で見ることができます。
「神農本草経」の中品に収載されていました。長く曲折が少なく、皮が黄褐色、内面黄白色で苦みが強いものが良品とされ、肥大したもの、細すぎるもの、色の濃いものなどは劣るとされています。
熱を冷まして湿邪(しつじゃ)を除く清熱燥湿薬(せいねつそうしつやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、黄柏(おうばく)などがあります。効能は黄連や竜胆草(りんどうそう)、黄柏によく似ていますが、利尿・駆虫作用があり、皮膚疾患によく効くのが特徴です。
熱を冷まし、下痢を止める働きがあります。
殺虫作用があり、激しい痒みや炎症性の腫れ物、水虫、あせもなどに外用薬として用いられていました。苦参のみを煎じた苦参湯(くじんとう)は陰部の痒みや炎症性の腫れ物などに塗り薬として使われています。代表的な漢方薬に防風(ぼうふう)や蝉退(せんたい)と一緒に配合された消風散(しょうふうさん)や、黄金と一緒に配合された三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)があります。
胃腸が弱く、陽が不足している方には不向きです。
生薬の配合で混ぜると毒性が強く出やすい組み合わせを「十八反(じゅうはっぱん)」と言います。苦参もこの中に含まれており、配合禁忌とされている生薬は藜芦(りろ)です。藜芦は苦参以外にも人参(にんじん)、丹参(たんじん)、西洋参(せいようじん)、沙参(しゃじん)、玄参(げんじん)、細辛(さいしん)、赤芍(せきしゃく)、白芍(びゃくしゃく)とも相反します
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