沙参(しゃじん)・南沙参(なんしゃじん)
基原
キキョウ科CampanulaceaeのツリガネニンジンAdenophora triphylla A.DC.、トウシャジンA. stricta Miq.、その他同属植物の根
性味
甘、微寒
帰経
肺・胃
効能・効果
①清熱祛痰
特徴
ツリガネニンジンは日本全国に分布している多年草で、山野や山地の草原、林縁、草刈などの管理された河川堤防、山道の脇、林縁などに自生しています。日本国外では樺太、千島列島に分布しています。芽生えた若苗は山菜として利用され、「トトキ」という別名で呼ばれることがあります。和名のツリガネニンジンの由来は、花が釣鐘形で、根の形が朝鮮人参に似ているためです。昔は朝鮮人参の偽物として市場に出回ることもあったようですが、補益薬である朝鮮人参とは効能は似ておらず、代用品として用いることはできません。
春の若い芽は山菜のトトキとして食用にされています。「山でうまいはオケラにトトキ、里でうまいはウリ、ナスビ、嫁に食わすは惜しうござる」と歌われるほど、庶民のあいだで美味しいものの一つに例えられていました。
沙参と呼ばれる生薬には、北沙参(ほくしゃじん)と南沙参(なんしゃじん)の2種類があります。北沙参はセリ科のハマボウフウの根であり、南沙参はキキョウ科のツリガネニンジンやトウシャジンの根です。日本では北沙参は「浜防風」という名前で売られており、基本的に沙参といえば南沙参のことを示しています。中国では逆に北沙参のことを沙参と呼んでいるので、注意が必要です。現在の中国市場では北沙参が頻用されています。北沙参と南沙参はどちらも清養肺胃に働きますが、効能は北沙参の方が優れており、養陰に働きます。南沙参は祛痰の効能を持っています。
沙参は「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の上品に収載されおり、古くから薬用として利用されていました。
根が肥大した長円錐形で、内部が白く、充実したものが良品とされています。
体を潤す滋陰薬(じいんやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に玄参(げんじん)、天門冬(てんもんどう)、麦門冬(ばくもんどう)、黄精(おうせい)、百合(びゃくごう)、玉竹(ぎょくちく)、旱蓮草(かんれんそう)、枸杞子(くこし)、女貞子(じょていし)、亀板(きばん)、鼈甲(べっこう)があります。
清熱祛痰が主であり、肺熱の咳嗽に用いられます。
鮮沙参(南沙参の新鮮品)は清熱養陰生津に働くので、熱病傷陰に使用します。
生薬の配合で混ぜると毒性が強く出やすい組み合わせを「十八反(じゅうはっぱん)」と言います。沙参もこの中に含まれており、配合禁忌とされている生薬は藜芦(りろ)です。藜芦は沙参以外にも人参(にんじん)、丹参(たんじん)、西洋参(せいようじん)、苦参(くじん)、玄参(げんじん)、細辛(さいしん)、赤芍(せきしゃく)、白芍(びゃくしゃく)とも相反します。
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