乙字湯(おつじとう)
組成
柴胡(さいこ)・黄芩(おうごん)・升麻(しょうま)・大黄(だいおう)・甘草(かんぞう)・当帰(とうき)
効果
病状がそれほど激しくなく、体力が中位で衰弱していないものの次の諸症:
キレ痔、イボ痔
効能
祛除血分湿熱
主治
血分の湿熱にともなう痔核・陰部瘙痒・下血など
方意
疼痛出血などを伴う痔の特効薬として頻用されています。痔核の脱出、肛門周囲のうっ血、浮腫や炎症によいです。
診断のポイントは痔核・出血・脱肛・裂傷・胸脇苦満などです。虚証ではない場合に用います。
原方には当帰が入っておらず、生姜(しょうきょう)・大棗(たいそう)が入ります。のちに浅田宗伯が加減して当帰が加えられました。当帰を加えたことで鎮痛作用は弱くなりましたが、鬱血を除く働きが強くなっています。
類方鑑別
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):
比較的体力のある人で、乙字湯と同様の症状を訴えますが、冷えのぼせの傾向があり、下腹部に抵抗・圧痛を認める場合に用います。
大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう):
さらに症状が激しく体力が充実した人の場合に用います。
当帰建中湯(とうきけんちゅうとう):
体力がやや低下した方で脱肛の傾向があり、局所の疼痛が激しい場合に用います。
芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう):
比較的体力の低下した人で、出血する場合に用います。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう):
中気下陥による弛緩性の痔に用います。
参考文献
編著者: 神戸中医学研究会 / [新装版]中医臨床のための方剤学 / 東洋学術出版社 (2012)
編著者: 髙山宏世 / 腹証図解 漢方常用処方解説 / 日本漢方振興会 (1988)
著者: 杉山卓也 / 現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 / 日経印刷 株式会社 (2018)
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