桜皮(おうひ)
基原
バラ科Rosaceaeのヤマザクラ Prunus jamasakura Siebold ex Koidzumi 又はカスミザクラ Prunus verecunda Koehneの樹皮
主な漢方薬
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)
特徴
サクラは日本人にとって歴史的に馴染みの深い植物であり、花見などの鑑賞目的で栽培・品種改良がされてきました。花見の文化が日本に根付いたのは、江戸時代に徳川吉宗が各地にサクラを植栽し、庶民の娯楽として花見を奨励したことが始まりだと言われています。観賞用で最も多く栽培されているのはソメイヨシノであり、開花予想日を結んだ桜前線も殆どがソメイヨシノを取り上げています。こうしてひとつの植物の開花状況を逐一報道するのは、世界から見ても珍しい例であり、日本人にとってサクラがいかに特別なものであるかを示しています。
サクラの果実はサクランボまたはチェリーと呼ばれ、世界中で広く食用とされています。日本では花を塩や梅酢に漬けた桜漬けや、桜餅の葉など果実以外も食用として利用されてきました。木材として家具や建築資材、樺細工や版木、さらには燃料としても利用されており、観賞用だけでなく生活に深く根付いた植物でもあります。
桜皮は日本で独自に使用されている生薬であり、中国には元々ありません。中国では同じサクラ属植物のシナミザクラの果実を強壮薬として利用していますが、樹皮は使われていません。日本独自の生薬は他にも赤芽柏(あかめがしわ)があります。
解毒・解熱・鎮咳の作用があり、古くから民間薬として使用されてきました。江戸時代には民間療法として「一切の食毒、二日酔い、フグの毒にあたったとき、熱病、マムシに噛まれたときに使用する」という記録が残っています。
桜皮には排膿作用があり、華岡青洲によって開発された十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)には桜皮が用いられています。十味敗毒湯は皮膚湿疹や蕁麻疹などに用いられ、『万病回春(まんびょうかいしゅん)』の荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)を元に作られたとされています。十味敗毒湯は後に桜皮を樸樕(ぼくそく)に、羌活(きょうかつ)を独活(どっかつ)に改められていますが、現在も一部のメーカーより桜皮を用いた十味敗毒湯が販売されています。
桜皮が使われている漢方薬は他に治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)がありますが、こちらも桜皮の代わりに樸樕が用いられている場合があります。
※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。
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