亀板(きばん)

基原

イシガメ科TestudinidaeのクサガメChinemys reevesii Grayなどの腹甲

性味

鹹・甘、寒

帰経

腎・心・肝

効能・効果

①滋陰潜陽・清虚熱
②益腎強骨
③固経止崩
④養血補心

主な漢方薬

三甲復脈湯(さんこうふくみゃくとう)
大補陰丸(だいほいんがん)
固経丸(こけいがん)
枕中丹(ちんちゅうたん)

特徴

「鶴は千年、亀は万年」と言われるほど、他の動物と比べて長寿とされる鶴と亀は、ともにめでたい動物として尊ばれてきました。その中でもカメの仲間は滋養強壮の妙薬として、不老長寿を望む様々な人に利用されてきました。

生のものからできるだけきれいに肉を取り去ったものが良品であるとされ、加熱処理したものは劣品とされます。

中国南部や香港で昔から広く愛されている亀苓膏(きれいこう)という薬膳の材料として使われており、日本では「亀ゼリー」という通称で有名です。亀板の他に土茯苓(どぶくりょう)、甘草(かんぞう)、仙草(せんそう)、忍冬藤(にんとうどう)など様々な生薬が用いられています。ゼラチンで固めるのではなく、亀の腹甲の裏のコラーゲン成分が蒸気で蒸されることで自然に固まります。一般的には苦くてそのままでは食べ辛いため、シロップや蜂蜜をかけて口当たりをよくして食べることが多いです。美肌や美顔効果・デトックス・便秘・夏ばてなどさまざまな効能があるとされています。伝説では同治帝(どうちてい)が天然痘の治療に亀苓膏を食べたと言われています。亀苓膏の効果でほとんど治りかけていたのですが、西太后(せいたいごう)に言われて食べるのをやめてしまい、その後病が悪化して同治帝は死んでしまった、という逸話があります。

カメの仲間は背中とお腹に甲羅があります。イシガメ科のクサガメの腹甲は亀板という生薬になり、スッポン科のシナスッポンの背甲は鼈甲(べっこう)という生薬になります。亀板は「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の上品、鼈甲は中品に収載されている薬物です。亀板は神農本草経に「亀甲(きっこう)」の原名で収載されていたこともあり、混同しないように注意が必要です。どちらも陰を補って体の上部へ昇った熱を冷ます働きがありますが、亀板のほうが滋陰補腎の力が強く骨や筋肉を強くする働きに優れ、鼈甲のほうが退熱と軟堅散結(なんけんさんけつ:痰や瘀血などによるしこり・腫瘤・結石を次第に消滅させること)の効能に優れています。

亀板を煮出して製したものを亀板膠(きばんきょう)と言い、亀板よりも補血・止血作用、滋陰作用が優れているとされています。サクサクとして柔らかく透明なものが良品とされています。鹿の角である鹿角(ろっかく)煮込んで作った鹿角膠(ろっかくきょう)と共に用いられる亀鹿二仙膠(きろくにせんきょう)は補腎薬の代表格です。

体を潤す滋陰薬(じいんやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に沙参(しゃじん)、天門冬(てんもんどう)、麦門冬(ばくもんどう)、玄参(げんじん)、百合(びゃくごう)、玉竹(ぎょくちく)、旱蓮草(かんれんそう)、枸杞子(くこし)、女貞子(じょていし)、黄精(おうせい)、鼈甲があります。

陰虚陽亢(いんきょようこう:潤い不足により相対的に熱の状態が強くなった状態)によるふらつき・めまい・頭痛などに用いられます。

体内の熱を鎮め、焦燥・筋肉のひきつり・痙攣などに用いられます。代表的な漢方薬に炙甘草(しゃかんぞう)や鼈甲と一緒に配合された三甲復脈湯(さんこうふくみゃくとう)があります。

腎精虚による腰や膝のだるさ・無力・筋骨の弱りなどの症状に用いられます。

潤い不足により血に熱が生じ、これにより引き起こされた不正出血・月経過多などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に黄芩(おうごん)や白芍(びゃくしゃく)と一緒に配合されている固経丸(こけいがん)があります。

心血虚による驚きやすい・動悸・不眠・健忘などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に竜骨(りゅうこつ)や遠志(おんじ)と一緒に配合されている枕中丹(ちんちゅうたん)があります。

熱を冷ます作用があるので、胃腸が冷えている方や妊婦さんには使用できません。