黄精(おうせい)
基原
ユリ科 Liliaceaeのカギクルマバナルコユリ Polygonatum sibiricum Red.やナルコユリ Polygonatum falcatum A.Grayその他同属植物の根茎
性味
甘、平
帰経
脾・肺・腎
効能・効果
①補脾気・益脾陰
②潤肺止咳
③補腎益精
主な漢方薬
黄精湯(おうせいとう)
特徴
黄精は本来中国産のカギクルマバナルコユリが原料です。しかし、日本では近縁種のナルコユリが代用として用いられてきました。ナルコユリは漢字で「鳴子百合」と書きます。花が並んで下垂する様子を、田畑から害鳥を追い払う鳴子に例えたことが由来です。生薬名の黄精の由来は、根っこが黄色い強精剤であることからという説や、精力が衰えたときに物が黄色に見える(かすんで見える)のを回復させる薬という説があります。
ナルコユリととてもよく似た植物にアマドコロというものがあります。アマドコロの根茎は玉竹(ぎょくちく)という生薬になります。花の数や茎の形で見分けることは可能とされていますが、区別をつけるのが難しいものも多く、一般的には同属植物の大型の根茎を「黄精」、小型のものを「玉竹」として使用しているところもあります。両者の効能は似ていますが、黄精は脾や腎を補うのに対し、玉竹は肺や胃を潤す働きが強いです。共に味の甘いものが良品とされ、苦味を呈するものは薬用に向かないとされています。
生で服用すると咽を刺激するため、一般的には蒸した熟黄精(じゅくおうせい)を使用します。蒸したものは色が黒くなります。
黄精が日本で広く知られたのは江戸時代の頃です。滋養強壮剤として民間で人気となり、砂糖漬けにした黄精が売られていました。現代でも、東北地方には黄精を使った「黄精飴」が売られています。
疲労回復・滋養強壮作用を期待して薬酒に用いられています。「黄精酒」と言って、黄精に砂糖を加え、焼酎につけて作ります。江戸時代の俳人・小林一茶も愛用していたという記述が残っています。
古くから中国では精力をつける妙薬として使われており、現代でも滋養強壮の目的で家庭薬や栄養ドリンクに黄精が配合されています。
体を潤す滋陰薬(じいんやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に沙参(しゃじん)、浜防風(はまぼうふう)、天門冬(てんもんどう)、麦門冬(ばくもんどう)、玄参(げんじん)、百合(びゃくごう)、玉竹、旱蓮草(かんれんそう)、枸杞子(くこし)、女貞子(じょていし)、亀板(きばん)、鼈甲(べっこう)があります。
補気(エネルギーを補う)作用があり、胃腸虚弱による食欲不振や病後の回復に用いられます。
肺を潤す作用もあり、口の渇きや痰を伴わない咳などに用いられます。
血圧降下作用・強心作用・血糖降下作用などでも注目されており、糖尿病患者の口渇にも応用されています。
熟地黄(じゅくじおう)と効能が似ていますが、熟地黄は腎陰を補い精や血を増やす方向に働き、黄精は脾を補って肺を潤し、精や潤いを増す方向に働きます。
体を潤す作用がある反面、湿った痰の出る方、胃が極端に弱っている方、下痢をしている方には使用を避けたほうがよいです。
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