七物降下湯(しちもつこうかとう)
組成
当帰(とうき)・熟地黄(じゅくじおう)・白芍(びゃくしゃく)・釣藤鈎(ちょうとうこう)・黄耆(おうぎ)・川芎(せんきゅう)・黄柏(おうばく)
効果
身体虚弱の傾向のあるものの次の諸症:
高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり、耳なり、頭重)
効能
滋陰養血・熄風
主治
血虚生風による頭のふらつき・めまい感・筋肉のひきつりなど
方意
四物湯(しもつとう)に釣藤散と黄柏、黄耆を加えた処方で、証は四物湯とほぼ同じです。体格はやせ型、皮膚枯燥して浅黒く、虚弱で冷え症の傾向があります。
診断のポイントは、最低血圧の高い高血圧・冷え症・皮膚枯燥などです。尿蛋白を見ることもあります。
老化・慢性病・その他で陰血が暗耗し、血虚による肝陽上亢や不養筋のために内風が生じ、ふらつき・めまい感・筋肉のひきつりなどがみられます。
血虚で血圧の高い方に用います。四物湯(当帰・白芍・熟地黄・川芎で)で血虚を治し、釣藤散・黄耆が血圧降下作用及び脳血管拡張作用により高血圧を治療します。
七物降下湯は大塚敬節先生の創薬で、「症候による漢方治療の実際」に載っています。原著によれば、四物湯に釣藤散4g、黄耆3g、黄柏2gを加えており、自身の高血圧・頭痛・めまい・のぼせ・疲労感・眼底出血を経験して創製したもので、服用により症状の改善をみて、以後易疲労感のある高血圧症・尿蛋白・腎硬化症の疑いの高血圧症に用いて効果があったと述べています。
類方鑑別
八味地黄丸(はちみじおうがん):
体力はあまり低下していませんが、下腹部の腹壁緊張が低下し、陰萎・頻尿・夜尿症など排尿異常を訴えて高血圧のある場合に用います。
釣藤散(ちょうとうさん):
中年以降の体力中等度の高血圧症で、慢性の頭痛・肩こりを訴え、怒りやすく、眼球結膜の充血などのある場合に用います。
黄連解毒湯(おうれんげどくとう):
体力充実している方の高血圧で、赤ら顔・のぼせ・頭痛・安・不眠・心悸亢進のある場合に用います。
参考文献
編著者: 神戸中医学研究会 / [新装版]中医臨床のための方剤学 / 東洋学術出版社 (2012)
編著者: 髙山宏世 / 腹証図解 漢方常用処方解説 / 日本漢方振興会 (1988)
著者: 杉山卓也 / 現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 / 日経印刷 株式会社 (2018)
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