藿香(かっこう)
基原
シソ科LabiataeのパチョリPogostemon cabin Benth.の全草または葉
性味
辛、微温
帰経
肺・脾・胃
効能・効果
①発表解暑
②化湿止嘔
③行気止痛
主な漢方薬
藿香正気散(かっこうしょうきさん)
香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)
藿香半夏湯(かっこうはんげとう)
特徴
藿香には「広藿香」と「土藿香(または「川藿香」)」の二種類があります。「広藿香」は中国の広東省・雲南省などで産出されるシソ科のパチョリの全草を乾燥させたもので、産出地の広東省に由来して「広藿香」と呼ばれます。これに対し、四川省から産出されたものはシソ科のカワミドリの全草を乾燥させたもので、「土藿香」や「川藿香」と呼ばれています。どちらも同じ藿香という名前がついていますが、「広藿香」と「土藿香」とでは含有する成分が異なっています。現在では一般的に藿香というと「広藿香」を指すことが多いです。なぜ藿香が2つあるのかというと、「広藿香」の原材料のパチョリが南方の熱帯地域でしか栽培できず北方で育たなかったため、類似したカワミドリが代用されたためと考えられています。カワミドリは日本全国に自生しており、湿りがちな場所を好みます。
「広藿香」の基原であるパチョリはインド原産で、パチョリの名も南インドのタミル人の言語であるタミル語に起源します。タミル語で「緑の葉」を意味するパッチャイ・イライがその名前の由来です。
暑い環境で良く育ちますが、直射日光は好みません。白やピンクの小さな花を咲かせ、その花は強い芳香を放ちます。乾燥させた葉を水蒸気蒸留することによって精油(パチョリ油)が得られます。古くから香や香水に用いられており、その香りは「墨汁のような香り」や「土の香り」などと表現されています。かつてインドからヨーロッパに輸出されていた高価な織物やショール等に防虫剤としてとして使用されていました。
夏季に発生する暑邪(しょじゃ)を除き、熱中症などを改善する祛暑薬(きょしょやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に佩蘭(はいらん)、白扁豆(びゃくへんず)、緑豆(りょくず)、西瓜(せいか)、荷葉(かよう)などがあります。
藿香には体に取り付いた邪(ウイルスなどの病原菌)を発散させる効果があります。夏の暑さ(暑熱)を除去する効能にも優れ、夏季に冷たい飲食物をとり過ぎたことによる下痢・腹満・嘔吐・発熱などの症状(いわゆる夏風邪)に蘇葉(そよう)や半夏(はんげ)と一緒に用いられます。代表的な漢方薬は藿香正気散(かっこうしょうきさん)です。
健胃作用があり、体にたまった湿を取り除き、脾胃の気の巡りをよくします。心窩部のつかえ・悪心・嘔吐に用いられ、代表的な漢方薬に縮砂(しゅくしゃ)と一緒に配合されている香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)があります。
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