LI5. 陽渓(ようけい)
所属する経脈
手の陽明大腸経(ようめい だいちょうけい)
別名・別表記
別名:中魁(ちゅうかい)
別表記:陽谿(『谿』は『渓』の旧字体)
名前の由来
陽渓(ようけい)の『陽』は「陽経」のこと、『渓』は2つの筋肉で作られたくぼみを山間の谷に例えたものです。
このツボは陽経に属していて、親指へと伸びる2つの筋肉(短母指伸筋と長母指伸筋)の腱の間にできるくぼみに位置していることから陽渓と名付けられました。
陽経…正経十二経脈(手の陽明大腸経などのこと)は6つの陽経と6つの陰経に分かれており、陽経には六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)の名前のつく経脈が該当する(陰経には六臓(肝・心・脾・肺・腎・心包)が該当)。また、陽経と陰経には互いに対をなす相手が存在し、手の陽明大腸経(陽経)は手の太陰肺経(陰経)とペアを作る。
要穴
① 大腸経の経火穴(けいかけつ)
五行論(ごぎょうろん)において、陽渓は『火』の性質を持っています。
五行論(五行説)…自然界に存在する全ての物を、『木・火・土・金・水』の5つの属性に分類する東洋哲学の理論。手の陽明大腸経に属するツボにも五行が配当されており(=五行穴)、陽渓は『火』にあたる。
位置
手関節後外側、手関節背側横紋橈側、橈骨茎状突起の遠位、タバコ窩(橈骨小窩)の陥凹部。
手首の関節の裏(手の甲側)、親指を外側に開いたときに浮き出る2本の腱の間に陽渓があります。
陽渓のあるこのくぼみはタバコ窩と呼ばれていて、かつては粉末状の嗅ぎタバコをこのくぼみに入れて吸っていました。
また、手首にある陽渓と肘にある曲池(きょくち)を結ぶ線上には、手の陽明大腸経に属するツボが縦に整列していて、陽渓 → 偏歴(へんれき) → 温溜(おんる) → 下廉(げれん) → 上廉(じょうれん) → 手三里(てさんり) → 曲池 の順に並んでいます。
主治・効能
消化器系の症状
下痢、消化不良
手の陽明大腸経に属するツボのため、上記のような消化器系の症状に用いられます。
整形外科領域の症状
肩・腕・肘・手首の痛み、関節リウマチ、腱鞘炎、片麻痺
主に、手の陽明大腸経の走行部位と関係のある症状に対して用いられます。
顔の症状
頭痛、耳鳴り、難聴、目の充血、歯の痛み、のどの腫れ・痛み
手の陽明大腸経は顔にも分布しているため、顔に出る症状に対しても効果があります。
局所解剖
皮膚 → 皮下組織 → 短母指伸筋腱と長母指伸筋腱の間
関係する筋肉
- 短母指伸筋
- 長母指伸筋
関係する動脈・静脈
- 橈骨動脈・静脈
- 橈側皮静脈
関係する神経
- 橈骨神経
参考文献
著者: 長濱善夫 / 東洋医学概説 / 創元社 (1961)
編著者: 南京中医学院 / 訳編者: 中医学概論邦訳委員会 / 中国漢方医学概論 / 中国漢方医学書刊行会 (1965)
編集: 天津中医学院, 学校法人後藤学園 / 監訳: 兵藤明 / 翻訳: 学校法人後藤学園中医学研究室 / 針灸学[経穴篇] / 東洋学術出版社 (1997)
著者: 劉燕池, 宋天彬, 張瑞馥, 董連栄 / 監訳: 浅川要 / [詳解]中医基礎理論 / 東洋学術出版社(1997)
著者: James H. Clay, David M. Pounds / 監訳者: 大谷素明 / クリニカルマッサージ ひと目でわかる筋解剖学と触診・治療の基本テクニック / 医道の日本社 (2004)
著者: 滝沢健司 / [図表解]中医基礎理論 / 東洋学術出版社(2009)
監修: 形井秀一, 髙橋研一 / 著者: 坂元大海, 原島広至 / ツボ単 / エヌ・ティー・エス (2011)
著者: Andrew Biel / 監訳: 阪本桂造 / ボディ・ナビゲーション ~触ってわかる身体解剖~ / 医道の日本社 (2012)
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