温胆湯(うんたんとう)
組成
半夏(はんげ)・竹筎(ちくじょ)・枳実(きじつ)・陳皮(ちんぴ)・甘草(かんぞう)・茯苓(ぶくりょう)・生姜(しょうきょう)
効果
体力中等度以下で、胃腸が虚弱なものの次の諸症:
不眠症、不安神経症、多夢、熟睡感がない、動悸、胸やけ、口の粘り
効能
理気化痰・清胆和胃
主治
胆胃不和・痰熱内擾:
悪心・嘔吐・イライラ・口が苦い・不眠・驚きやすい・動悸・多痰・胸苦しい・めまい・てんかん発作など
方意
半夏・陳皮・茯苓・生姜・甘草の組み合わせは、痰湿症状を改善する二陳湯(にちんとう)という漢方薬になります。これに痰が発する熱を冷ます竹筎と、気を巡らせる働きのある枳実を足したものが温胆湯です。
胃腸虚弱やストレスの継続により、体内に病理的な水の停滞が生まれると、これが胆熱(不眠や動悸の原因)を生じさせ、不安が強く決断できないメンタルを形成します。ビクビク・オドオドした小心者のことを「肝が小さい」と表現しますが、温胆湯はその「胆」を強く丈夫にすることで、不安症や悪夢を見るような病態を改善します。
いつも何かを怖がり、睡眠の質が悪く、胃腸の弱い方に最適な漢方薬です。
類方鑑別
黄連解毒湯(おうれんげどくとう):
顔がのぼせて、熱感があり、落ち着かないため寝付けないという方に用いられます。
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう):
口臭が気になり、悪心嘔吐し、お腹がゴロゴロ鳴り下痢する方に用いられます。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅこつぼれいとう):
イライラ・不安感・動悸があり不眠の方に用いられます。神経過敏の症状に適します。
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ):
疳が高ぶってイライラしているために興奮が収まらず、血液循環不足があり、眠りにつけない方に用いられます。
釣藤散(ちょうとうさん):
イライラを原因とする震えや痙攣を抑えます。高血圧で頭痛やめまいがある方に用いられます。
参考文献
編著者: 神戸中医学研究会 / [新装版]中医臨床のための方剤学 / 東洋学術出版社 (2012)
編著者: 髙山宏世 / 腹証図解 漢方常用処方解説 / 日本漢方振興会 (1988)
著者: 杉山卓也 / 現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 / 日経印刷 株式会社 (2018)
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