烏頭(うず)

烏頭

基原

トリカブト属キンポウゲ科Ranuncuraceaeのカラトリカブト Aconitum carmichaelii Debx.その他の同属植物の母根。烏頭には川烏頭と草烏頭の2種があり、川烏頭は主に四川省で栽培されている。草烏頭は各地の野生品を収集したもの。

性味

大辛、大熱。有毒

帰経

十二経

効能・効果

①回陽救逆
②補陽益火
③温陽利水
④散寒止痛

主な漢方薬

烏頭湯(うずとう)

特徴

トリカブトはドクウツギやドクゼリと並んで日本三大有害植物の一つとされる毒草の代表です。北半球の寒帯から温帯に分布する多年草で、種類が豊富で日本には約25種類あります。皆よく似ており見分けるのは至難の業です。種類や産地によって毒性の強さに差があり、まれにサンヨウブシのように無毒なものもありますが、基本的には猛毒な植物です。形が烏の頭に似ていることが名前の由来とされています。

トリカブトの毒性が特に強いのが根ですが、葉も有毒で2-3枚で中毒を起こします。トリカブトの強い毒性は古来よりアイヌ民族がクマを仕留めるための矢毒として用い、要人の暗殺にも使われていたと言われています。トリカブトの若い葉は山菜として知られるモミジガサ(シドケ)やニリンソウと似ているため、春の山菜による中毒事件をよく引き起こします。中には死亡例もあるため、山菜を取る際には注意が必要です。

中毒症状の初期は舌のしびれや嘔吐がおこり、やがて酩酊状態となります。その後不整脈や昏睡・臓器不全をおこしやがて心停止により死に至ります。非常に少ない量で致死量となり、経口摂取から数十秒で死亡する場合があるほど即効性があります。現代でも特異的な解毒薬や治療法はなく、胃洗浄などによる除去や、人工呼吸器や循環管理などによる対症療法でしか手立てはありません。

生薬はトリカブトの根を使っており、母根を烏頭、子根を附子(ぶし)と呼びます。附子を毒として用いる場合は附子(ぶす)と呼び、美人でない人を「ブス」と呼ぶのは、附子の神経毒により顔の表情がおかしくなることに由来するとも言われています。

そのままの状態では使えないため、市販されているものは修治加工されて弱毒化したものです。それでも使用するときには慎重に用いなければなりません。なぜなら附子や烏頭の毒性は種類や産地で変わり、さらに患者の体質によって感受性が異なるためです。高齢で虚弱な人ほど感受性が弱いため必要量が多くなりますが、若くて元気な人に同じ量を使えば毒性が強く出てしまいます。体温を上昇させる運動・飲酒・入浴は避け、発熱時や温かい季節では使用量を控える必要があります。

栽培品である川烏頭(せんうず)と野生品である草烏頭(そううず)の使い方や成分はほとんど同じですが、草烏頭の方が毒性と効能が強いです。草烏頭で有名なのは、華岡青洲(はなおかせいしゅう)が作り出した麻酔薬です。華岡青洲は草烏頭や曼陀羅華(まんだらげ)の実(チョウセンアサガオ)を主成分とした6種類の薬草を組み合わせて麻酔薬を考案し、世界で初めて全身麻酔を使用した外科手術を行いました。その麻酔薬は通仙散(つうせんさん:別名・麻沸散(まふつさん))といって、実母と妻への投薬実験では、実母は死に妻は失明という大きな犠牲を伴いながら完成に至りました。

体内に入った寒邪を散らす散寒薬(さんかんやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に附子(ぶし)、肉桂(にっけい)、乾姜(かんきょう)、呉茱萸(ごしゅゆ)、茴香(ういきょう)、蜀椒(しょくしょう)、艾葉(がいよう)があります。

効能は体を温め、全身の陽(特に腎と心)を鼓舞して補う働きがあります。また、全身の経絡を巡らせて寒湿を除き、痛みを緩和させます。

子根である附子と効能はほぼ同じですが、鎮痛作用は附子よりも優れています。しかし、強心作用や体を温める働きは附子より弱いため、主に痛み止めに使われます。

生薬の配合で混ぜると毒性が強く出やすい組み合わせを「十八反(じゅうはっぱん)」と言います。烏頭もこの中に含まれており、配合禁忌とされている生薬は半夏(はんげ)、栝楼仁(かろにん)、栝楼実(かろじつ)、栝楼根(かろこん)、貝母(ばいも)、白芨(びゃくきゅう)、白蘞(びゃくれん)などがあります。