栝楼仁(かろにん)
基原
ウリ科CucurbitaceaeのキカラスウリTrichosanthes kirilowii Maxim.の種子
性味
甘、寒
帰経
肺・胃・大腸
効能・効果
①清熱化痰
②利気寛胸・降濁散結
③消腫散結
④潤腸通便
主な漢方薬
柴陥湯(さいかんとう)
栝楼薤白白酒湯(かろうがいはくはくしゅとう)
栝楼薤白半夏湯(かろうがいはくはんげとう)
小陥胸湯(しょうかんきょうとう)
柴陥湯(さいかんとう)
特徴
キカラスウリはウリ科の植物で、つる性の多年草です。熟すと黄色の果実をつけます。
キカラスウリの根は「栝楼根(かろこん)」という生薬になります。栝楼根は「天花粉(てんかふん)」という別名もあり、おしろいの原料やあせもの予防及び治療に用いられていました。デンプンを多く含むため、非常食としても活用されていたようです。胃や肺の津液を補う働きに優れ、熱病による口渇や咳に用いられます。
種子は「栝楼仁」という生薬になります。肺を潤して痰を除き、気のめぐりをよくする働きがあります。便通改善効果もあり、咳嗽や痰、胸の苦しさ、便秘、腫れ物などに用いられます。
中国では果実全体を「全栝楼」、果実の皮殻を「栝楼皮・栝楼殻」、種子を圧搾し油分を除いたものを「栝楼霜・楼仁霜」として区別しています。「栝楼皮・栝楼殻」は清熱に優れ、栝楼仁は肺や腸を潤す働きに優れています。「全栝楼」は「栝楼皮・栝楼殻」と栝楼仁の両方の効能を兼ね揃えています。「栝楼霜・楼仁霜」の効能は栝楼仁とほぼ同じですが、潤す働きは少し弱くなります。
肺熱による粘稠で濃い痰や、痰熱による症状を治療する清化熱痰薬(せいかねったんやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に貝母(ばいも)、竹茹(ちくじょ)、冬瓜仁(とうがにん)、などがあります。
栝楼仁は清熱するとともに、胸郭の痰を除き、気の流れをよくする働きがあります。粘稠で出しにくい痰を伴う咳や胸苦しいなどの症状に用いられます。気滞血瘀(気血の巡りが悪い状態)による胸の痛みにも有効です。代表的な漢方薬に、薤白(がいはく)と一緒に配合されている栝楼薤白白酒湯(かろうがいはくはくしゅとう)や、黄連(おうれん)、半夏(はんげ)と一緒に配合されている小陥胸湯(しょうかんきょうとう)があります。
炎症を押さえる働きがあり、乳腺炎や皮膚化膿症の初期に用いられます。
腸を潤して便通を良くする働きがあり、乾燥性の便秘に用いられます。
民間薬として、尿や母乳の出をよくする目的で栝楼仁を煎じて飲んでいました。
生薬の配合で混ぜると毒性が強く出やすい組み合わせを「十八反(じゅうはっぱん)」と言います。栝楼仁もこの中に含まれており、配合禁忌とされている生薬は烏頭(うず)や附子(ぶし)です。
※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。
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