水蛭(すいてつ)
基原
ヒルド科HirudidaeのウマビルWhitmania pigra Whitman,チャイロビルWhitmania acranulata Whitman,チスイビルHirudo nipponica Whitmanなどの全虫体
性味
鹹・苦、平。有毒
帰経
肝
効能・効果
①破血逐瘀・消癥
主な漢方薬
抵当丸(ていとうがん)
特徴
ヒルは環形動物門ヒル綱に属する生物の総称で、海や淡水の中だけでなく、陸上の湿った場所などに生息しています。哺乳類に対して吸血する種もあり、人を対象とするものも少なくありません。日本でも川に入っているときや、沼地や湿度の高い森林などを歩いているときに取り付かれ、血を吸われることがあります。水田にはチスイビルが多く、作業中に血を吸われることがよくありましたが、現代は農薬などによって減少しています。人や動物の血を吸う不気味で厄介者なイメージのあるヒルですが、実は医療と深い関わりがあります。
ヒルの唾液には麻酔成分があるため、噛まれても痛みを感じません。ヒル自体に毒性はなく、傷は数日で治ります。ヒルは血液を吸って体内に取り込むと、6~8ヶ月もの時間をかけて消化します。この長い期間体内に取り込んだ血液が固まるのを防ぐために、唾液には血液の凝固作用を妨げる成分が含まれています。この性質が医療や薬として盛んに利用されてきました。
ヨーロッパにおいては、古くからヒルを患部の皮膚に吸いつかせて血を吸わせる瀉血療法が行われていました。インドのアーユルベーダでも、ヒルは悪い血を吸い出すものとして、患部をヒルに吸わせる医療行為があります。アーユルヴェーダにおける医薬の神様であるダンヴァンタリが手にヒルを持っていることからも、ヒルを重要なものとして扱っていたことがわかります。日本でも民間療法として、腫れものができたときに患部をヒルに吸わせていました。
ヒルの唾液腺から発見された血液抗凝固成分であるヒルディンはヨーロッパでは医薬品として認められています。日本では医薬品として認められていないため、主に健康食品として販売されています。
「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の下品に分類され、形が整って小さく、黒褐色で、泥が付着せず、虫に食われていないものが良品とされています。
瘀血(おけつ:血流が悪い状態)を改善する活血化瘀薬(かっけつかおやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に川芎(せんきゅう)、延胡索(えんごさく)、蘇木(そぼく)、降香(こうこう)、丹参(たんじん)、桃仁(とうにん)、姜黄(きょうおう)、牛膝(ごしつ)、紅花(こうか)などがあります。
血瘀による無月経・腹腔内腫瘤などに用いられます。代表的な漢方薬に、桃仁や大黄(だいおう)と一緒に配合された抵当丸(ていとうがん)があります。打撲外傷の腫脹・疼痛に、牽牛子(けんごし)や大黄と一緒に用いられます。
生きた水蛭を外用し吸血させると、皮膚化膿症や丹毒に有効です。
子宮収縮作用があるため、妊婦さんには禁忌です。血虚があり瘀血がない方にも用いません。
※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。
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