青蒿(せいこう)
基原
キク科CompositaeのカワラニンジンArtemisia apiacea Hance,クソニンジンArtemisia annua L.などの全草
性味
苦、寒
帰経
肝、胆
効能・効果
①清退虚熱
②清熱解暑
③清熱涼血
主な漢方薬
清骨散(せいこつさん)
蒿芩清胆湯 (こうごんせいたんとう)
青蒿鼈甲湯(せいこうべっこうとう)
特徴
クソニンジンは全体に強い匂いがあり、高さが約150cmまで成長する大型の越年草です。原産地はユーラシア大陸であり、アジアから東ヨーロッパにかけての広い地域に分布しています。和名の由来は得意な異臭を持つことと、葉の形がニンジンの葉に似ていることから来ています。名前からはとても臭い植物のような印象を受けますが、ヨモギの仲間であり、そこまでひどい悪臭がするわけではありません。
青蒿から発見された成分で有名なのは、マラリア治療薬であるアルテミシニンです。青蒿の中国名由来から、青蒿素(チンハオス)とも呼ばれています。マラリアは熱帯地域に存在するハマダラカを媒介とするマラリア原虫によって引き起こされる感染症で、HIV・AIDS、結核と並ぶ三大感染症の一つです。アルテミシニンが開発される以前にもクロロキンやキニーネと言ったマラリア治療薬はありましたが、副作用が非常に強く、これらの薬剤に対する耐性を持つマラリア原虫が増えたことなどが問題となっていました。1960年後半に中国でマラリア治療薬の研究が始まり、マラリアの治療に用いられる200種類以上の生薬を調べていったところ、青蒿から抽出されたアルテミシニンがマラリアに治療効果を示しました。アルテミシニンは副作用も少なく、実用化されると多くの地域で命を救い、2015年に発見者はノーベル生理学・医学賞を受賞しました。近年ではアルテミシニンに耐性を示すマラリア原虫も発見されており、さらなる研究が必要となっています。
カワラニンジンも青蒿の基原植物ですが、現在の中国市場はクソニンジンが中心に流通しています。中国北方地区ではカワラヨモギ(茵陳蒿)を青蒿と呼ぶ場合もあるので注意が必要です。また、江蘇省、四川、上海ではオトコヨモギもクソニンジンとして用いられています。
「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の下品に分類されます。
寒涼性の性質を持ち、涼血や清虚熱の働きにより陰虚に対して用いられる清退虚熱薬(せいたいきょねつやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に地骨皮(じこっぴ)、銀柴胡(ぎんさいこ)、白薇(びゃくび)、胡黄連(こおうれん)などがあります。
陰虚の骨蒸潮熱・盗汗などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に、銀柴胡や胡黄連と一緒に配合された清骨散(せいこつさん)があります。
暑温の発熱・悪寒・汗が出る・咳嗽・口渇・頭痛・悪心・下痢などの症状に、滑石(かっせき)や連翹(れんぎょう)などと一緒に用いられます。小児の夏季熱にも、地骨皮や知母(ちも)などと一緒に使用されます。
マラリアや腎盂炎、湿熱鬱阻胆系の往来寒熱に用いられます。代表的な漢方薬に、黄芩(おうごん)や竹茹(ちくじょ)と一緒に配合された蒿芩清胆湯 (こうごんせいたんとう)があります。
温熱病後期の邪伏陰分による夜間に発熱し朝には解熱する症状や、熱が退いても汗が出ないなどの症状に用いられます。代表的な漢方薬に、生地黄(しょうじおう)や鼈甲(べっこう)と一緒に配合された青蒿鼈甲湯(せいこうべっこうとう)があります。紫斑には升麻(しょうま)、鼈甲、生地黄、当帰(とうき)などと一緒に使用し、鼻出血には新鮮品をすりつぶして湯で沖服します。
止痒の効能を持っているので、血分有熱による風疹(蕁麻疹)の瘙痒に有効です。
虚寒の下痢や多汗のある方には用いません。
※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。
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