沈香(じんこう)
基原
ジンチョウゲ科ThymelaeaceaeのAquilaria agallocha Roxb.などの材中に黒色の樹脂が沈着したもの
性味
辛・苦、温
帰経
脾・胃・腎
効能・効果
①行気止痛
②温中止嘔
③温腎納気・降気平喘
主な漢方薬
沈香降気湯(じんこうこうきとう)
沈香湯(じんこうとう)
特徴
沈香は熱帯アジア原産ジンチョウゲ科ジンコウ属の常緑高木です。日本への渡来は8世紀ごろと考えられており、古来より白檀とともに香道で用いられる香木の一つとして知られています。ジンコウ属の木が風雨や病気、害虫などによって木部を侵されたとき、その防御策として内部に樹脂を分泌します。その樹脂が蓄積したものを乾燥させ、木部を削り取ったのが沈香です。原木は比重が軽いため水に浮きますが、樹脂が沈着することで比重が増すと水に沈むようになります。これが沈香の名前の由来です。
沈香は香りの種類、産地などを手がかりとしていくつかの種類に分類され、「伽羅(きゃら)」「奇楠香(かなんこう)」「真南盤」など多くの商品名がつけられています。その中で特に質の良いものは「伽羅」と呼ばれ、非常に貴重なものとして乱獲された事から、現在では沈香と伽羅を産するほぼすべての沈香属はワシントン条約の希少品目第二種に指定されています。最近では、野生品の採取に加えて、人工的に傷をつけて樹脂を分泌させたり、木材を10年以上埋めて腐らせて沈香を採集する方法も用いられています。
「名医別録(めいいべつろく)」の上品に収載されており、堅固で黒褐色、表面につやがあり、水に沈み、燃えやすく香りのよいものが良品とされています。
気の流れをよくする行気薬(こうきやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に厚朴(こうぼく)、香附子(こうぶし)、木香(もっこう)、烏薬(うやく)、陳皮(ちんぴ)、檳榔子(びんろうじ)、薤白(がいはく)、枳実(きじつ)があります。
気滞による胸脇の痞満・疼痛や月経不順・下腹部痛に、香附子や砂仁(しゃにん)と一緒に用いられます。代表的な漢方薬に沈香降気湯(じんこうこうきとう)があります。痰飲内停の気滞による胸の痞え・疼痛には、木香や半夏(はんげ)、茯苓(ぶくりょう)などと一緒に使用します。
胃寒の嘔吐・吃逆に、丁香(ちょうこう)や柿蒂(してい)などと一緒に用いられます。
腎陽虚の不納気による吸気性呼吸困難に、附子(ぶし)、肉桂(にっけい)、熟地黄(じゅくじおう)、五味子(ごみし)、補骨脂(ほこつし)などと一緒に用いられます。代表的な漢方薬に、沈香湯(じんこうとう)があります。胸部寒凝気滞の胸苦しい・呼吸困難・呼吸促迫などの症状に、烏薬や木香、檳榔子などと一緒に用いられます。
沈香と肉桂はどちらも下腹部疼痛に有効ですが、沈香は気滞に、肉桂は陽虚の方に適しています。
煎じ薬には入れず、粉末や磨汁を沖服します。
気虚下陥や陰虚火旺の方には禁忌です。
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