LU1. 中府（ちゅうふ）

　 所属する経脈

手の太陰肺経（たいいん はいけい）

　別名・別表記

別名：膺中兪（ようちゅうふ）、肺募（はいぼ）

　名前の由来

中府（ちゅうふ）の『中』は中焦（ちゅうしょう）のこと、『府』は経気が集まるところを指しています。

つまり、中府とは「中焦の気が集まるところ」という意味です。

このツボは、手の太陰肺経と足の太陰脾経が交わるところであり、中焦の気が上がってきて集まることから中府と名付けられました。

　要穴

① 肺の募穴（ぼけつ）

募穴の『募』は「集結する」という意味を持っており、中府は肺の経気が集まるところです。

そのため、肺や呼吸器系に関係する病変の際にはこのツボに反応がよく現れます。

募穴は全部で12個あり、それぞれは六臓六腑に一つずつ対応しています（中府は肺に対応）。

それらはすべて腹部や胸部に位置しており、必ずしも同名の経脈上にあるとは限りません。

中府は同名の経脈上にあり、肺経に属し、かつ肺の募穴となっています。

　位置

鎖骨の下を肩に向かって触っていったとき、指が止まるくぼみに雲門（うんもん）があり、その下方1寸（親指1本分下がったところ）に中府があります。

第1肋間の高さには、体の中心から順に華蓋（かがい）、彧中（いくちゅう）、庫房（こぼう）、中府が並んでいます。

　主治・効能

呼吸器系の症状

咳嗽（せき）、気管支喘息、胸の痛み、鼻づまり、鼻水、嗅覚障害、のどの腫れ・痛み

中府は肺の募穴であることから、呼吸器に関係する症状を治療する際に用いられます。

消化器系の症状

食欲不振、嘔吐、お腹の張り

手の太陰肺経は中焦より起こることから、中府は上記のような消化器症状にも治療効果があります。

整形外科領域の症状

肩の痛み、背中の痛み、胸郭出口症候群

主に、手の太陰肺経の走行部位と関係のある症状に対して使われます。

　局所解剖

皮膚 → 皮下組織 → 大胸筋 → 小胸筋 → 胸腔

関係する筋肉

• 大胸筋
• 小胸筋
• 上腕二頭筋短頭
• 烏口腕筋

関係する動脈・静脈

• 腋窩動脈
• 胸肩峰動脈・静脈
• 外側胸動脈・静脈
• 橈側皮静脈

関係する神経

• 鎖骨上神経

　参考文献

著者: 長濱善夫 / 東洋医学概説 / 創元社 (1961)
編著者: 南京中医学院 / 訳編者: 中医学概論邦訳委員会 / 中国漢方医学概論 / 中国漢方医学書刊行会 (1965)
編集: 天津中医学院, 学校法人後藤学園 / 監訳: 兵藤明 / 翻訳: 学校法人後藤学園中医学研究室 / 針灸学[経穴篇] / 東洋学術出版社 (1997)
著者: 劉燕池, 宋天彬, 張瑞馥, 董連栄 / 監訳: 浅川要 / [詳解]中医基礎理論 / 東洋学術出版社（1997）
著者: James H. Clay, David M. Pounds / 監訳者: 大谷素明 / クリニカルマッサージ ひと目でわかる筋解剖学と触診・治療の基本テクニック / 医道の日本社 (2004)
著者: 滝沢健司 / [図表解]中医基礎理論 / 東洋学術出版社（2009）
監修: 形井秀一, 髙橋研一 / 著者: 坂元大海, 原島広至 / ツボ単 / エヌ・ティー・エス (2011)
著者: Andrew Biel / 監訳: 阪本桂造 / ボディ・ナビゲーション ～触ってわかる身体解剖～ / 医道の日本社 (2012)