紫苑(しおん)
基原
キク科CompositaeのシオンAster tataricus L.f.の地下部
性味
辛・苦、温
帰経
肺
効能・効果
①潤肺下気・化痰止咳
主な漢方薬
紫苑湯(しおんとう)
杏蘇散(きょうそさん)
特徴
シオンは高さ1~2mになる大型の多年草で、鑑賞のために庭に植えられることもあります。西日本のやや湿った草原に自生もしており、国外では中国、朝鮮半島、シベリアに分布しています。野生の個体は湿地植生の変化や園芸用の採取などにより数を減らしており、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧Ⅱ種に分類されています。
8~10月に茎の上部に径が2~3cmの淡紫色の頭花を多数つけます。平安時代には日本でも薬用として栽培されていましたが、現在国内で栽培されているシオンは花の鑑賞目的であり、生薬として利用されるものはほぼ全て輸入品です。
「枕草子」や「源氏物語」にも登場することから、古くから日本人にとって馴染みのある植物です。シオンの花は切り花にも用いられ、月見にはススキの花と供える風習があり、十五夜花とも呼ばれています。
現在市場には紫苑(軟紫苑)と山紫苑(硬紫苑)の2種類があります。山紫苑はキク科のオタカラコウの地下部を基原としています。
紫苑は「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の中品に収載されています。名前の由来は、「本草綱目(ほんぞうこうもく)」に根が紫色で、柔苑(しなやか)なことが由来で名付けられたと記されています。
外部が紫色、内部が白色で、細長い根がたくさん付いており、軟らかでよく揃ったものが良品とされています。
咳を止める止咳平喘薬(しがいへいぜんやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に桔梗(ききょう)、款冬花(かんとうか)、白前(びゃくぜん)、旋覆花(せんぷくか)、桑白皮(そうはくひ)、枇杷葉(びわよう)、蘇子(そし)、杏仁(きょうにん)があります。
外感の咳嗽で痰の喀出がすっきりしないときに、荊芥(けいがい)や桔梗などと一緒に用いられます。
陰虚労熱(肺結核など)の咳嗽・痰に血が混じるなどの症候に、知母(ちも)や阿膠(あきょう)などと一緒に用いられます。
慢性の咳嗽に、款冬花や百部(しゃくぶ)などと一緒に用いられます。
肺気虚の寒咳には、党参(とうじん)、黄耆(おうぎ)、乾姜(かんきょう)などと一緒に用いられます。
紫苑は一般に生用し、蜜炙すると潤肺の効能が強くなります。
陰虚火旺の燥咳・咳血や実熱の咳嗽に対して単独で用いるのは避けます。
※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。
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