菖蒲(しょうぶ)・石菖根(せきしょうこん)

基原

サトイモ科AraceaeのセキショウAcorus gramineus L.の根茎

性味

辛・苦、温

帰経

心・脾・胃

効能・効果

①除痰開竅
②醒神健脳
③化湿開胃

主な漢方薬

菖蒲瀉心湯(しょうぶしゃしんとう)
菖蒲鬱金湯(しょうぶうこんとう)
安神定志丸(あんしんていしがん)

特徴

セキショウブはショウブの近縁植物で、ショウブの半分ほどの葉の長さを持つ多年生植物です。日本や中国、ベトナム、インド、済州島に分布しています。名前の由来は岩場に生え、ショウブに似ていることからです。

当初はサトイモ科に分類されていましたが、植物体に精油を含むこと、他の多くのサトイモ科が形成する塊茎がないこと、DNAの分析からはサトイモ科との相違点もあり、新しい見解(APG分類体系)では独立科のショウブ科としています。

日本薬局方外生薬規格には「石菖根(せきしょうこん)」として記載されており、主に入浴剤として利用されるほか、鎮痛・鎮静・健胃薬などに利用されてきました。

市場には類似生薬としてサトイモ科のショウブを基原とした「水菖蒲(すいしょうぶ)」があり、古来より両者は混同されていたようです。水菖蒲には「菖蒲根(しょうぶこん)」や「白菖(はくしょう)」といった別名もあります。セキショウは一般に山間部の渓流ぞいや水のかかる石の上などに生え、ショウブは池や小川のほとりの泥中に根茎を張ります。

水菖蒲の効能はほぼ菖蒲と同じですが、菖蒲は水菖蒲より開竅に優れ、水菖蒲は化湿開胃・化痰止咳および癰種蒼疹湿疹などに対する効果が優れています。過服すると悪心・嘔吐をきたしやすいので注意が必要です。

ショウブは強い芳香を持ち、葉が剣状であるため、古くから魔除けとして利用されてきました。男子の健康と成長を願う端午の節句で用いられ、菖蒲湯(しょうぶゆ)、菖蒲酒(あやめざけ)や菖蒲刀(あやめがたな)など厄除けに利用されています。菖蒲湯では元来セキショウの方を用いるのが正しかったようですが、香りが強すぎたため、次第にセキショウよりも匂いの弱いショウブの葉が用いられるようになりました。

「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の上品に分類され、昌蒲の名で「味辛温。風寒湿痺、咳逆上気を主治し、心孔を開き、五臓を補い、九竅を通じ、耳目を明るくし、音聲を出す。久しく服すれば身を軽くし、忘れず迷い惑わず、年を延ばす。一名昌陽」と記載されています。「名医別録(めいいべつろく)」では「耳聾、癰瘡を主治し、腸胃を温め、小便を止め、四肢の湿痺で屈伸できないものを利し、小児の寒熱病で身積熱が解けないときは浴湯に使う。耳を聡くし,目を明らかにし,心智を益し、志を高くし、老いず」と記されています。

除痰開竅には九節菖蒲(一寸間に9節有するもの)が適し、熱痰の場合は鮮菖蒲がよく、化湿開胃には石菖蒲が適していると言われています。

うっ帯した気分を晴らし、気を開く働きのある開竅薬(かいきょうやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に牛黄(ごおう)麝香(じゃこう)・安息香(あんそくこう)があります。

菖蒲・麝香・竜脳(りゅうのう)は芳香開竅に働きます。麝香・竜脳は辛香走竄で、少量でも開竅回蘇の効能が得られます。菖蒲は芳香化痰を通じて開竅通閉の効果をあらわすので、開竅回蘇の力は弱く痰濁蒙閉のみに適します。

痰濁蒙閉心竅による意識障害・譫言などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に、半夏(はんげ)と一緒に配合された菖蒲瀉心湯(しょうぶしゃしんとう)があります。

心神不寧による驚きやすい・恐がる・不眠・狂躁状態・健忘・痴呆などの症状に用いられます。代表的な漢方薬に、遠志(おんじ)や茯神(ぶくしん)と一緒に配合された安神定志丸(あんしんていしがん)があります。

湿困脾胃による食欲がない・少食・胸腹部が張るなどの症状に、蒼朮(そうじゅつ)や厚朴(こうぼく)などと一緒に用いられます。腹痛・下痢・食欲不振には、黄連(おうれん)などと一緒に用いられます。

聡耳の効能を持つため、難聴・耳鳴りに内服または外用されます。

燥散の性質があるので、陰虚・血虚・滑精・多汗には用いられません。

※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。

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