麝香(じゃこう)

基原

シカ科CervidaeのジャコウジカMoschus moschiferus L.の雄の袋状腺嚢(ジャコウ腺)の分泌物

性味

辛、温

帰経

十二経

効能・効果

①開竅醒神
②通経達絡
③活血消腫・止痛

主な漢方薬

六神丸(ろくしんがん)
奇応丸(きおうがん)
宇津救命丸(うづきゅうめいがん)

特徴

麝香はジャコウジカから採集される高価な動物生薬です。ジャコウジカはヒマラヤ山岳地帯から中国を中心に広く生息しています。シカ科に分類されますが、雌雄ともに一般的なシカが持つような大型の角はありません。雄のジャコウジカは腹部に香嚢(ジャコウ腺)を持ち、分泌腺から強く香る分泌物を出します。ジャコウジカは一頭ごとに別々の縄張りを作って生活しており、繁殖の時期だけつがいを作ります。そのため麝香は雄が遠くにいる雌を香りで誘引するためだと言われています。

麝香の「麝」の字は鹿と射を組み合わせたものです。「本草綱目(ほんぞうこうもく)」によると、射は麝香の香りが極めて遠方まで広がる拡散性を持つことを表しているとされています。

麝香の刺激臭は1000分の1以下に薄めると芳香に代わります。甘く粉っぽい香りを持ち、香水の香りを長く持続させる効果があるため、香料として盛んに用いられました。現在香料用途としては、合成香料である合成ムスクが用いられています。

麝香の産地であるインドや中国では、有史以前から薫香や香油、薬などに用いられていたと考えられています。昔は麝香を得るためにジャコウジカを殺す必要があったため、その個体数は急速に減少していきました。ジャコウジカは絶滅の危惧にあるとされ、ワシントン条約により麝香の商業目的の国際取引は原則として禁止されています。

精神安定作用、強壮作用、抗炎症作用、鎮静作用などがあり、六神丸(ろくしんがん)・奇応丸(きおうがん)・宇津救命丸(うづきゅうめいがん)などの日本の伝統薬・家庭薬にも配合されていました。現在は輸入できないため、これらの薬に配合されている麝香はワシントン条約で禁止される前に輸入された在庫を使用しています。かつては救心にも使用されていましたが、麝香が入手困難になったことから現在は配合されていません。当時麝香を使っていた日本の医薬品メーカーが資金を出しあい、中国でジャコウジカを養殖する試みが行われましたが、ジャコウジカは臆病で気性が荒く、囲いに突進して自滅してしまうケースが多発したため、目的を達することはできませんでした。現在では、中国で生きたまま麝香嚢から分泌物を採取する試みがされていますが、採取量はごく微量だそうです。

市場品は通常多くの混入物により希釈されています。ジャコウ特有のムスコン臭が強く、尿臭のないものが良品とされています。

麝香は「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の上品に収載されており、古くから薬用として利用されていました。その効果として、「久しく服用すると「邪気」を除き、夢をみて飛び起きたり、寝ていて悪夢にうなされる事がなくなる」と記されています。

うっ帯した気分を晴らし、気を開く働きのある開竅薬(かいきょうやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に牛黄(ごおう)菖蒲(しょうぶ)・安息香(あんそくこう)があります。

麝香と牛黄は開竅の要薬です。牛黄は涼性で清心豁痰に、麝香は温性で通経散結に優れています。また、両薬は癰瘍に対して効果を発揮しますが、牛黄は防腐解毒に優れており、麝香は活血消腫に優れ初期の未潰に適するので、瘀血凝滞には麝香を用いて牛黄は使用しません。

高熱による意識障害・痙攣・脳血管障害による意識障害・喘鳴・精神的原因による意識喪失・毒ガスなどによる意識喪失などの閉証に、犀角(さいかく)や牛黄と一緒に用いられます。

腹腔内腫瘤・無月経に、活血化瘀の莪朮(がじゅつ)紅花(こうか)などと一緒に用いられます。

難産・死胎・胎盤残留などに、肉桂(にっけい)と一緒に用いられます。

打撲内出血による腫脹・疼痛に、紅花などと一緒に用いられます。

咽喉の腫脹疼痛や皮膚化膿症に、牛黄や竜脳(りゅうのう)などと一緒に用いられます。乳香(にゅうこう)や没薬(もつやく)などを配合した粉末を膏にして外用しても、消腫止痛の効果があります。

煎じ薬には用いません。

走竄開散の力が強く元気を損傷するので、意識障害の脱証には禁忌です。

妊婦さんにも禁忌になります。

※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。

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