紫根(しこん)・紫草(しそう)
基原
ムラサキ科BoraginaceaeのムラサキLithospermum erythrorhizon Sieb.& Zucc.の根
性味
甘・鹹、寒
帰経
心・肝
効能・効果
①涼血活血・解毒透疹
②利小便滑腸
主な漢方薬
紫雲膏(しうんこう)
紫草消毒飲(しそうしょうどくいん)
紫草快斑湯(しそうかいはんとう)
当帰紅花散(とうきこうかさん)
特徴
ムラサキは明るい草原に生えるムラサキ科の多年草です。根が紫色の染色の材料にされることで有名な植物です。
江戸時代に日本でムラサキの栽培に成功し、井の頭の水を使って紫染めが始まりました。京紫に比べて青味のある紫で、「江戸紫」と呼ばれ、派手好きの江戸の人々の間で人気を博しました。
明治時代以降になると紫染めは途絶え、乱獲や開発による生育環境の変化、病害虫の流行もあって野生のムラサキは非常に稀になってしまいました。海外種のであるセイヨウムラサキとの交雑も懸念されており、環境省のレッドリストでは絶滅危惧lB類に指定されています。セイヨウムラサキは栽培が容易ですが、色素を含まず染色には使えません。セイヨウムラサキがムラサキの名札を付けられて販売されているケースもあり、知らずに家庭で育ててしまうと、在来種であるムラサキとの交雑を意図せず促進してしまう場合があるので注意が必要です。セイヨウムラサキは花が小型で、中心が淡黄色なので注意すれば区別することができます。
紫色のシコニンやアセチルシコニンが傷の回復を早める効果があるため、外用薬として使用されます。ごま油、蜜蝋、豚脂の中で紫草と当帰(とうき)を煮て作った紫雲膏(しうんこう)は、江戸時代の名医である華岡青洲(はなおかせいしゅう)が作ったもので、火傷や擦り傷、痔などに使われています。軟膏は紫草の色が移り特徴的な赤紫色を呈しています。
ムラサキの根を硬紫根と称し、別に同科のMacrotomia euchroma Pauls.の根を基原とする軟紫根があり同様に用いられていますが、硬紫根が正品になります。
火熱が血に及んで出血や発熱するものを治療する清熱涼血薬(せいねつりょうけつやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に生地黄(しょうじおう)・牡丹皮(ぼたんぴ)・赤芍(せきしゃく)・犀角(さいかく)があります。
血熱毒盛で斑疹が透出しないときや紫黒色を呈するときに蝉退(せんたい)や葛根(かっこん)と一緒に用いられます。代表的な漢方薬に、紫草快斑湯(しそうかいはんとう)や当帰紅花散(とうきこうかさん)などがあります。
咽痛をともなうときには、牛蒡子(ごぼうし)や甘草(かんぞう)と一緒に用いられます。代表的な漢方薬に、紫草消毒飲(しそうしょうどくいん)があります。
麻疹の予防や症状の軽減に、単味を煎服します。
皮膚化膿症・潰瘍・湿疹・皮膚炎・熱傷・凍傷・陰部掻痒症などに、当帰などと膏薬にして外用します。代表的なものに紫雲膏があります。
血熱毒盛による排尿障害・排尿痛や便秘に、清熱解毒薬とともに用いるか単味の粉末を服用します。
寒滑であり、脾胃虚寒の軟便には用いません。
斑疹がすでに透発して鮮やかな紅色を呈するときには用いません。
※ 桃華堂では生薬単体の販売はしておりません。
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