芡実(けんじつ)
基原
スイレン科NymphaeaceaeのオニバスEuryale ferox Salisb.の成熟種子
性味
甘・渋、平
帰経
脾・腎
効能・効果
①健脾止瀉
②益腎固精・縮尿
③祛湿止帯
主な漢方薬
水陸二仙丹(すいりくにせんたん)
金鎖固精丸(きんさこせいがん)
易黄湯(いおうとう)
特徴
オニバスは日本・朝鮮半島・中国・台湾・インドなどに分布する浮葉性の一年草です。水底の地下茎から葉柄を伸ばし、夏ごろに巨大な葉を水面に広げます。その大きさは直径1m強にもなり、日本に自生する一年草としては最大です。名前に「ハス(バス)」とありますが、オニバスはスイレン科であり、ハス科のハスとはまったく別の植物です。葉の表面には不規則なシワが入っており、葉の両面や葉柄にはトゲが生えていることから、「オニ」の名前がつけられました。「枕草子」では見た目が恐ろしげなものとしてオニバスが「水蕗(みずふぶき)」の名で挙げられています。「水蕗」の名前は、葉がフキに似ていることから名づけられたと考えられています。
日本では古くから馴染みのある植物で、かつてはお餅に入れたり、炒って子供のおやつにしたりと食用にもされていました。中国やインドでは種子を食用としており、そのための栽培をしていることもあります。
昔は日本の本州・四国・九州に広く分布していましたが、環境の悪化や埋め立て、河川改修などによって生息地が減少し、現在は絶滅危惧II類に指定されています。
芡実は「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の上品に収載されており、古くから滋養強壮目的や、関節痛・尿失禁などに用いられていました。
漏れ出るものを引き締める収渋薬(しゅうじゅうやく)に分類され、同じような効能を持つ生薬に山茱萸(さんしゅゆ)、五味子(ごみし)、烏梅(うばい)、烏賊骨(うぞくこつ)、蓮子肉(れんしにく)、訶子(かし)などがあります。
胃腸を元気にして、下痢を止める働きがあります。特に慢性的な胃腸虚弱の泥状~水様便に用います。
腎虚の遺精・尿失禁に用いられます。代表的な漢方薬に、金桜子(きんおうし)と一緒に配合された水陸二仙丹(すいりくにせんたん)があります。
湿熱による黄色におりものに用いられます。代表的な漢方薬に、黄柏(おうばく)や車前子(しゃぜんし)と一緒に配合された易黄湯(いおうとう)があります。
芡実と山薬(さんやく)はどちらも性質が穏やかで、効能がよく似ています。山薬は補益に働き、芡実は収渋に優れており、山薬は補肺にも働きます。
収渋作用があるため、大小便が出にくい方には用いません。
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