HT5. 通里（つうり）

　 所属する経脈

手の少陰心経（しょういん しんけい）

　名前の由来

通里（つうり）の『通』は「通りすぎる」こと、『里』は「集まるところ」を意味しています。

このツボは絡穴であり（”要穴”の項を参照）、手の少陰心経と手の太陽小腸経の表裏両経に通じていることから通里と名付けられました。

　要穴

① 心経の絡穴（らくけつ）

絡穴の『絡』は「まとう」という意味で、表裏関係にある経脈へと分かれているところです（手の少陰心経 → 手の太陽小腸経）。

表裏の経脈にまたがる不調を同時に治療したり、慢性疾患に効果があるとされています。

　位置

手首の曲がりジワを小指側になでていくと、腱に触れます（尺側手根屈筋腱）。

その腱の手前にあるくぼみに神門（しんもん）があり、そこから腱の際に沿って肘側へと1寸（手の親指の横幅の長さ）上がったところに通里はあります。

尺側手根屈筋腱の際には他にもいくつかのツボが縦に並んでおり、通里の上方0.5寸に霊道（れいどう）、下方0.5寸に陰郄（いんげき）が位置しています。

　主治・効能

整形外科領域の症状

腕や肘の痛み・しびれ、手指のけいれん、尺骨神経麻痺

手の少陰心経の走行部位と関係のある症状に対して用いられます。

循環器系の症状

胸の痛み、動悸、息切れ

手の少陰心経に所属することから、循環器系の症状に効果があります。

精神科領域の症状

ヒステリー、不眠、癇癪（かんしゃく）

五臓の心は、精神と密接に関係しています。

顔の症状

めまい、目の充血、のどの腫れ・痛み、舌のこわばり

手の少陰心経は支脈が顔面部に及んでいるため、顔に出る症状を治療できます。

　局所解剖

皮膚 → 皮下組織 → 尺側手根屈筋と浅指屈筋の間 → 深指屈筋 → 方形回内筋

関係する筋肉

• 尺側手根屈筋
• 浅指屈筋
• 深指屈筋
• 方形回内筋

関係する動脈・静脈

• 尺骨動脈・静脈
• 尺側皮静脈

関係する神経

• 内側前腕皮神経
• 尺骨神経

　参考文献

著者: 長濱善夫 / 東洋医学概説 / 創元社 (1961)
編著者: 南京中医学院 / 訳編者: 中医学概論邦訳委員会 / 中国漢方医学概論 / 中国漢方医学書刊行会 (1965)
編集: 天津中医学院, 学校法人後藤学園 / 監訳: 兵藤明 / 翻訳: 学校法人後藤学園中医学研究室 / 針灸学[経穴篇] / 東洋学術出版社 (1997)
著者: 劉燕池, 宋天彬, 張瑞馥, 董連栄 / 監訳: 浅川要 / [詳解]中医基礎理論 / 東洋学術出版社（1997）
著者: James H. Clay, David M. Pounds / 監訳者: 大谷素明 / クリニカルマッサージ ひと目でわかる筋解剖学と触診・治療の基本テクニック / 医道の日本社 (2004)
著者: 滝沢健司 / [図表解]中医基礎理論 / 東洋学術出版社（2009）
監修: 形井秀一, 髙橋研一 / 著者: 坂元大海, 原島広至 / ツボ単 / エヌ・ティー・エス (2011)
著者: Andrew Biel / 監訳: 阪本桂造 / ボディ・ナビゲーション ～触ってわかる身体解剖～ / 医道の日本社 (2012)