蟾酥(せんそ)
基原
キガエル科BufonidaeのシナヒキガエルBufo bufo gargarizans Cantor、ヘリグロヒキガエルBufo melanostictus Schneiderなどの耳後腺および皮膚腺から分泌される白色漿液を加工し乾燥したもの
性味
甘・辛、温。有毒
帰経
胃・心
効能・効果
①解毒消腫
②闢穢開竅・醒神・止痛
主な漢方薬
六神丸(ろくしんがん)
特徴
蟾酥はヒキガエルの仲間の毒腺分泌物を乾燥したもので、強力な強心・鎮痛作用を持ちます。当初はヒキガエルの体全体を乾燥させたものを使用していましたが、有効成分が皮膚のイボから出る分泌物であることがわかり、これを集めるようになりました。分泌液を採取したヒキガエルは再び池に戻せば1年後にまた採取することが可能です。
1匹あたり、わずか数十mgくらいしか分泌液は採れず、さらに乾燥すればほんの数mgにしかなりません。分泌液は、はじめ白色ですが空気によって酸化して黒褐色になります。集めた分泌液は円盤状あるいは種々の形に整えて自然乾燥します。以前は真ん中に穴をあけて麻紐を通し、5個ほどを1連として吊るすことが多くありました。
味は、はじめは甘く刺激性があり、後に持続性の麻痺感を生じます。臭いはあまりありませんが、わずかに生臭さがあります。
主な有効成分は強心性ステロイドで、一日の服用量が2~5mgと微量であり、曰局収載生薬の中でも唯一「毒薬」に指定されています。
皮膚や粘膜に触れた場合は局所麻酔作用を示し、蟾酥が配合された丸薬や錠剤等の内服薬は、口中で噛み砕くと舌などが麻痺することがあるため、噛まずに服用することとされています。
原動物であるヒキガエル類が年々減少しており、中国野生資源保護管理条例で国家重点保護野生満材品種の第二種保護資源に指定されています。大きな原因としては、農薬の使用により餌となる昆虫の減少や水質汚染などが考えられています。ヒキガエルの養殖については、餌の確保に多額の費用がかかり、採算がとれないため実用化は難しい状況です。
民間薬で傷薬として用いられる「蝦蟇(がま)の油」は、実際は蟾酥ではなく、動物の脂肪から取った油もしくは植物のガマの油であったと考えられています。
「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」の下品に「蝦蟆」の名前で収載されています。乾燥すると表面は黒色になりますが、断面があめ色をしたものが良品とされています。
外用として主に使用される外用薬に分類され、同じような効能を持つ生薬に鉛丹(えんたん)、硫黄(いおう)、水銀(すいぎん)、明礬(みょうばん)、狼毒(ろうどく)、青黛(せいたい)、蝸牛(かぎゅう)などがあります。外用薬の多くは毒性をもっており、使用時には注意が必要です。内服してよい場合でも丸・散として服用し、また炮製してから外用すべきです。用量は厳守し中毒を防止する必要があります。
熱毒による皮膚化膿症・咽喉の腫脹疼痛に麝香(じゃこう)、乳香(にゅうこう)・没薬(もつやく)などと一緒に内服・外服します。代表的な漢方薬に、六神丸(ろくしんがん)があります。
中暑による意識障害・嘔吐・下痢・腹痛などの症状に、蒼朮(そうじゅつ)、丁香(ちょうこう)、麝香などと一緒に使用します。
煎剤には入れません。有毒であるため、長期間服用してはいけません。
外用時には目に入らないように注意します。妊婦には禁忌です。
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